明るく易しいDMC/「ベヨネッタ」

ベヨネッタ|オンラインコード版

ベヨネッタ|オンラインコード版

 

 デビルメイクライシリーズが好きな人にとっては、物足りなさを感じる部分があるかも。でも、個人的にはかなり楽しく遊べた。

 DMCシリーズと比較すると、多くの点で「ベヨネッタ」は易しい設計になっていると思う。回避ボタンからの無敵時間発生で、敵の攻撃をあまり気にせずにコンボを叩き込める、というゲームシステムは、とくにヌルゲーマーにとってはすさまじく爽快にゲームを楽しめる。また、ステージ構造は比較的単純で、マップをいちいち開いてにらめっこしながらちょっとずつ進む、みたいな疲れることをしなくてもすむのがありがたい。

 また、雰囲気はやたら明るくなってるのも個人的にはポイント高い。ぼくは非常に怖がりな人間なので、DMC程度の雰囲気ですら結構ビビってしまう。そんなぼくからすると、暗い雰囲気を取っ払い、かといって平凡な敵キャラ造形にはせず、明るさとグロテスクさを「天使」という形で両立させたのは見事。

 

ただまあ、これらの長所は、ぼくみたいにDMCのゲームシステムには惹かれつつも、DMC自体はハードルが高いと感じていた人間にとっての長所ではある。とくにマップについては、ヌルさを感じる人も多いだろう(ぼくも微妙に感じた)。また雰囲気についても、「明るいけどグロい」よりはいっそ普通に暗い雰囲気でグロいゲームのほうがいい、という人もいるはず。

あと単純に残念に感じた点として、ボリューム不足感はある。マップの単純さに加えて、チャプター数が2少なく、かつボス戦をするだけのチャプターもあるため、1週するだけならサクっと終わるなーという印象。まあやりこみやれっていう話かもしれないですが。

 

とはいえ、ヌルゲーマー・初心者に易しい作りだというのはたぶんそう。DMC系のゲームに興味あるけど難しそうっていう人はこっちやってもいいんじゃないかな。

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ファンサービス満載ではあるんだけど/早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』

メーラーデーモンの戦慄 (講談社ノベルス)

メーラーデーモンの戦慄 (講談社ノベルス)

 

 上木らいちシリーズの集大成ではある。上木らいちシリーズの過去4作にたびたび言及し、さらにはゲストキャラを登場させたりするなど、ファンサービス満載。上木らいちシリーズは傑作揃いなので、それらを思い出すだけでも楽しさを感じることはできる。

ただし、それは一見さんお断りであることと一緒ではある。ぼくがこの間読んだ村田沙耶香『地球星人』は、数々の描写や設定から過去の作品が連想される作品だったけど、今作の場合はもっと直接的な参照である。そのため、過去作を読んでないとどこが面白いのかわからないと思う。

 というわけで、今作も一種のファンアイテムとして扱うべきではある。なんだけど……。

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村田沙耶香の集大成兼寄せ集め/村田沙耶香『地球星人』

地球星人

地球星人

 

ある意味でこの小説は、村田沙耶香の小説の集大成といえるだろう。この小説には、過去に村田が書いてきたテーマがふんだんに詰め込まれている。小説前半の、主人公と由宇との関係は、デビューから『しろいろの街の、その骨の体温の』のころまでの作風を思わせるし、後半のいびつな共同生活を読んでると「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」、そして皆さんご存知『コンビニ人間』なんかを思い出す。村田ファンにとっては、「ここ、あの小説と同じだ!」といったような発見に満ち溢れた小説といえるだろう。

 そして、この小説はそれだけかもしれない。読み進めていて、過去の小説とのつながりを見出すことの楽しさはあっても、それはこの小説自体の良さを意味するわけではない。ぼくはこの小説を村田沙耶香の集大成といったけど、それは「寄せ集め」と表裏一体なんだと思う。ぼくは村田沙耶香の大ファンだからそれでも楽しめるけど、そうでない人にとっては……。

もちろん、さすがに村田沙耶香なので、それでもそれなりに読めるものになってしまい、読み進めるのが苦痛というわけではない。また、「地球星人」「人間工場」といった造語の数々には、未だ衰えぬ村田のシニカルなセンスを感じることができる。

でも、ファンアイテムかなあ。少なくとも、村田沙耶香の本をあんまり読んだことのない人が読む本ではない。

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人文系ヘタレ中流インテリのための進化論入門/吉川浩満『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

 『理不尽な進化』の著者・吉川浩満によるエッセイ集。進化論や行動経済学によって大幅な転換が起こった21世紀の人間観に基づいて、さまざまな議論を展開している。

……が、残念ながら議論自体には物足りなさを感じる部分が多かった。これは、細かい議論を行うことが(主に紙幅の問題で)できないからなんじゃないかと思う。「進化論は大事」という前提を「〇〇は大事とされてきた」という事実と組み合わせて「進化論と〇〇を組み合わせて考えてみよう!」としてしまうのは、気持ちとしてはわからなくもないが、その一方で「安直な思いつきなんじゃないの?」というツッコミもしたくなる。『理不尽な進化』みたいには議論の必要性を十分説明できてない感じ。

そうでないエッセイもあるにはある。ただ、それらのエッセイは、吉川オリジナルの議論というよりは単なる他の人の議論のまとめに終わっている。もちろん、アンチョコあるいはブックガイドとしてはこの上なく有用ではあるんですが、やっぱりそれ以上の価値があるとは思えない。

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王道と思いきや変化球バンバン投げてくる/森下suu『日々蝶々(1~12)』

日々蝶々 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

日々蝶々 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

 基本的には、まともに男と喋れない女の子とまともに女と喋れない男の子による、王道少女漫画ではある。展開のスピードに緩急がかなりあって、のんびり進んでたと思ったらいきなり急に時間がとんだりするんだけど、主人公と相手役の関係はまあ普通の範囲内ではあるはず。

ただ、王道だなーって読んでると突然不意をついたように意外な展開がやってくる。とくにびっくりしたのは、主人公の友達の清水あやがけっこう初期のころからフラグを立ててたのに、最後の方まで引っ張った挙げ句フラれて終わるという展開と、最初は面倒見のいい無害な先輩っぽい雰囲気で登場した後平が、これまた最後の方でいきなりライバル男に変貌するっていうところ。王道と思いきや変化球バンバン投げてくるので、かなりへえ~~って思いながら最後まで読めた。少女漫画って特殊な展開を作るときは、設定をすごく変なものにして魔球投げてくるイメージがあったので、カーブやフォークをちゃんと投げてくる作品は貴重なんじゃないかと思う。

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