日本の労働社会のせいで日本は男女不平等なのかもしれない/濱口桂一郎『働く女子の運命』

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働く女子の運命 *3

 

日本がたいへん男女不平等な国だと言われているのは、各種ニュースでご存知の通り。先日話題となった、はあちゅうを巡る騒動なんかを見ても、なんとなくそれはわかる。はあちゅう個人のおかしさををフェミニズム全体の問題と同一視するような風潮は、まさに男尊女卑的な発想が多くの人に共有されていることを示しているように思う。

だが、なぜそんなに日本は男女不平等なのだろうか? 本書にもある通り、「前近代社会からずっと、日本は決して女性の地位の低い国では」(濱口桂一郎『働く女子の運命』文春新書、2015年、p.4)なかった。それが、近代を経て現代へと至る中で、逆にどんどん女性の地位が低下していったというのは、かなり変な現象に思える。これは単なる偶然なのだろうか?

 

*1:文春新書

*2:文春新書

*3:文春新書

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社会人にとっては馴染みの薄い大学図書館の、手際の良い紹介/斉藤道子『首都圏 大学図書館ガイド』

首都圏 大学図書館ガイド オトナの知的空間案内

首都圏 大学図書館ガイド オトナの知的空間案内

 

 ぼくは一般的な人に比べると本を買うのにかける金額はかなり多いと思うんだけど、それでもウン千円もする本をポンポン買うほどの裕福さや熱意はない。しかし、そんな本の中にも、どうしても読みたい本は存在するだろう。しかし、そういった本の需要は少なく、なかなか普通の区立図書館には入っていないことも多い。

そういうときに役立つのがこの本だ。この本では、首都圏にある、一般人でも利用できる大学図書館のうちいくつかが紹介されている。副題の「オトナの知的空間案内」というのがまさに言い得て妙で、社会人(というか「非学生」)にとってはなかなか接する機会の少ない大学図書館という空間を、丁寧に案内してくれる。ついでにいうと、こういう本が出版されて大学図書館の一般利用者数が増えれば、それは大学図書館にとってもメリットがあるのでは?(主に予算とか予算とか予算とか……)

また、各図書館の特色を紹介しているのも面白い。ぼくは、大学図書館ごとに独自の試みが行われているということを今まであまり意識したことがなかったので(というか普通は意識しないと思う)、そういうことを発見できたのは収穫だった。

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最初は白なのにちょっとずつ黒ずんでいっていつの間にか真っ黒になる短編集/藤野可織『ドレス』

ドレス

ドレス

 

 藤野可織の小説の特徴をざっくり言語化するとすれば、「最初は白なのにちょっとずつ黒ずんでいっていつの間にか真っ黒になる小説」といったところだろう。藤野可織の小説は説明がやや少なく、断片的な情報を小出しにしてちょっとずつ話のアウトラインを描いていく傾向がある。そういう小説には、最初なんとなーくしか理解できなかった話の全体像がだんだんくっきりとしてくるという気持ちよさがある。

 

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なんで科学考証ダメなのに進化論は異様に正確なの?/クリストファー・ノーラン「インターステラー」

 まず、5次元空間に入ってからの怒涛の展開は、信頼と安心のノーランといった感じ。ここの要素がトンデモのように見える人もいるみたいだけど、むしろややトンデモ入っているからこそノーランの本領が発揮できるのではないか。だから終盤の展開は圧倒的に面白いと思った。

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良書だが、邦題は誤訳に近いのでは?/ティム・スペクター『ダイエットの科学』

ダイエットの科学―「これを食べれば健康になる」のウソを暴く

ダイエットの科学―「これを食べれば健康になる」のウソを暴く

 

 私たちが食べるものが、私たちの健康にどのような影響を与えるのかを、科学的な観点から調査した本。著者のティム・スペクターは双子研究の大家で、『双子の遺伝子』では双子の行動には遺伝的な要因による一致が多いものの、エピジェネティクスなどの要因により、確実に一致するわけではない、ということを主張している(らしい。ぼくは未読)。

双子研究という最強クラスの研究を行っていた著者による本ということで、信頼性は抜群。本書で中心となってくる議論は、食事と健康の関係も、遺伝やエピジェネティクス、そして腸内細菌に左右されるため、万人に有効な食事は存在しない、ということ。そしてそれらのうち腸内細菌は、自分でコントロールすることができるため、腸内細菌を大切にすることが大事だ、とスペクターは主張する。

この主張の立証は非常に真っ当。そして、有機野菜や食事の多様性、抗生物質をあまり使わないことなど、少し前であれば冷笑的な人に冷笑されていたような要素も、思ったよりも大事であることが科学的に立証されている、というのは非常に重要。

その一方で、脂質や肉など従来悪者にされていたものが意外と健康に悪影響を及ぼさない(脂質はトランス脂肪酸以外かなり安全、豚肉や牛肉は小さいリスクはあるかも、加工肉はかなりヤバイ)といった知見もきちんと見るべき。まあこの本で言われていることをこのエントリーで全て書くわけにもいかないのでこれぐらいにしておくが、豆知識たっぷりなのでぜひ読んでみてほしい。

 

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前半のコメディ部分が真の見所/ダグ・リーマン「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

 原作既読。なので、終盤の展開は正直いまいち。原作の終盤の展開もあれはあれでご都合主義的なバッドエンドだが、だからといってご都合主義的なハッピーエンドをされても……。あと、「All You Need Is Kill」というタイトルは、原作のバッドエンドの中で意味がわかるようになっていた(と記憶している)が、このハッピーエンドだと「オール・ユー・ニード・イズ・キル」というタイトルはあまり意味がないのでは?(と思ってたら、原題は "Edge of Tomorrow" っていうんだね。これはいいタイトルだと思う)

が、びっくりしたのは、前半のほうが主人公ウィリアム・ケイジ(トム・クルーズ)を徹底的にいじめ倒すブラックコメディみたいになっているところ。あのトム・クルーズがすごく弱そうな顔をしながら殺され続けるシーンの連続は意外性があり、かなり楽しめた。ついでにいうと、最初はひ弱な「トム・クルーズらしからぬトム・クルーズ」が、ループの中で「いつものトム・クルーズ」になるというのは、メタ的な意味でも面白い。

 

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まあ女の子と神木くんが圧倒的にかわいいので……/吉田大八「桐島、部活やめるってよ」

桐島、部活やめるってよ
 

 原作は未読。すげー変な映画だねこれ。高校生特有の実存の不安自体は巧みに描けている一方で、時系列をごちゃごちゃにした構成はあまり効果的ではない印象。そのせいで、良くも悪くも初見時の違和感が大きい。全体として悪い映画ではないんだけど。

とはいえ、女の子と前田(神木隆之介)の可愛さが圧倒的なので、違和感を覚えつつも許さざるを得なくなってしまう。特に神木くんの可愛さはすさまじく、かすみ(橋本愛)相手にSF映画だのタランティーノだのと空回りするシーンなんかは個人的に萌えポイントがとても高い。

 

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