SF的な日本で円満に暮らすっていうこと/円城塔、田辺青蛙『読書で離婚を考えた。』

 

読書で離婚を考えた。

読書で離婚を考えた。

 

 小説生成エイリアンこと円城塔とホラー小説家の田辺青蛙の夫婦が、お互いに本を勧め合うというかたちでコミュニケーションを取ろうとするファーストコンタクトSF。しかしコミュニケーションはあまりうまくいかず、円城はダイエットを始めるわ田辺は離婚をする夢を見るわでどんどん収集がつかなくなり、最終的には相互理解をほとんど諦め、でも夫婦をやっていこうという投げっぱなしエンド。

また、そもそも設定に難があり、円城と田辺が遠距離恋愛で付き合い始めるも数ヶ月で結婚し、しばらく東京と京都で別居婚をしていただとか、碇シンジのセリフと円城塔という名前をかけて、結婚式では円城が碇ゲンドウのコスプレをして田辺が碇シンジのコスプレをしただとか、荒唐無稽になってしまっているのは残念なところ。それから、そもそもなんで読書でコミュニケーションを取らなければいけないのかというツッコミもある。普通ファーストコンタクトSFでのコミュニケーションといえば素数を始めとする数学が出発点なんだけれども、この本だと逆に円城が木村俊一『連分数のふしぎ』を勧めていて、「おお、実は田辺がエイリアンだという叙述トリックだったのか!」とか思ったり。

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やはりぼくたちに必要なのは実証的・統計的な研究だ/北田暁大ほか『現代ニッポン論壇事情』

 

 特にここ最近評判の良くなってきた、松尾匡ブレイディみかこ山本太郎あたりの、経済成長(というか反緊縮)をちゃんと意識する左翼への、北田暁大栗原裕一郎後藤和智というこれまたおもしろいメンツによる援護射撃。ぼくが過去に書いた書評を見てもわかる通り、ぼくもだいたい松尾らと同じ立場なので、この本も褒めたいところだが……。

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どうしてぼくたちがバカなのかはわかるけど/網谷祐一『理性の起源』

 

理性の起源: 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ (河出ブックス 101)

理性の起源: 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ (河出ブックス 101)

 

 副題詐欺。ぼくたちが一見すると「愚かすぎる」のはなぜなのか? という疑問については、かなり詳しく、説得的に説明してくれる。しかし、なぜぼくたちはこんなに「賢すぎる」のか? という、もう一つの疑問にはあまりしっかり答えてくれない。なので、いい本なんだけど尻すぼみになってしまっていると思う。

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哲学の最前線の手際の良い紹介/岡本裕一朗『いま世界の哲学者が考えていること』

 

いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること

 

 日本ではまだちゃんと紹介されていないポストモダン以降の哲学を簡潔に紹介した本。この手の本はまだあまりなく、一応戸田山和久『哲学入門』もあるけど、あれは思いっきり自然主義に偏った本なので、ぼくは好きだけど中立性は薄い。この本は、かなり中立的な立場に立っているように思えるので、そのへんは心配しなくても大丈夫。

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凡作を通じて過去の読書体験を葬るということ/江波光則『鳥葬』

 

鳥葬 -まだ人間じゃない- (ガガガ文庫)

鳥葬 -まだ人間じゃない- (ガガガ文庫)

 

 個人的に、とてもつらい読書体験だった。

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「萌えられる異形」を描けるのはえらい/弐瓶勉『シドニアの騎士(1~15)』

 

 全体的にはいまいち。戦闘シーンがかなりわかりづらく、長々としたセリフをいちいち追いかけながら何が起こっているのかを文字で(!)把握しなければいけないので、かなーりテンポが悪い(ぼくは面倒になったので途中から流し読みした)。設定やストーリーも、驚きでひっくり返ってしまうようなレベルではない。

一応ちゃんと言っておくと、設定もストーリーも、「そこそこ」よくできたものではある。でも「そこそこ」でしかない。だから小説でもマンガでも映画でもゲームでも、これより面白い話自体はいくらでもあると思う。

ただし、真ヒロイン白羽衣つむぎのキャラクター造形だけはずば抜けてすばらしい。どう見ても男性器にしか見えないグロい造形のくせにいちいち可愛らしく感じてしまうというだけでもすごいと思う。この「萌えられる異形」を描くことができることを活かして、いっそフェチ全開で谷風長道ハーレムの半分くらいを気持ち悪い異形キャラにしてくれたら、もうちょっと見どころのあるマンガになったとは思うんだけど……。

 

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面白かった本(2017/5)

5月に読んで面白かった本のまとめ。

 

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