謎は謎のままで終わってしまった/「PSYCHO-PASS 3」

ライラプスの召命

ライラプスの召命

  • メディア: Prime Video
いやあ消化不良にもほどがあるでしょこれ。これがたとえば24分12話でやったとかなら、アニメというフォーマットの問題もあるし仕方ないと擁護できなくもないが、48分8話という変則的なフォーマットにしておいてこれだからね。時勢にあわせて移民ネタとかをいろいろ入れてきたのも、結局のところ結論部分でお茶を濁してしまってるせいで軽薄に見える。

テーマもあまりピンとこない。集団に対するサイコパスの測定っていうテーマは2期でもやっていたと思うので、あんま新鮮味を感じないんだよねー。上流階級に社会を牛耳ってマネーゲームをしている組織が存在する、っていうのもテーマとしてはだいぶ頭悪くて、もうちょっと細かく描写されるのであればまあ許せるが、描写不足のせいでただただ頭悪いだけになっている。

キャラクターは全体的には悪くないんだが、主人公の慎導灼だけはちょっとひどい。能力のメンタルトレースがほとんど超能力者めいているのは百歩譲って許すとしても、元軍人のイグナトフより身体能力高いところとかさすがに都合良すぎ。もう一人の主人公・イグナトフはいいキャラだと思うし、新しい執行官の面々もそれなりに魅力的だし、霜月課長の中間管理職っぷりとかもよかったので、全体的には悪くないんだが……。

今年の10冊(2019)

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

マネー・ボール〔完全版〕

マネー・ボール〔完全版〕

2019年に読んだ、印象に残った本およびその印象のまとめ(小説とノンフィクションをそれぞれ10冊ずつ)。

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信じられないくらい読みやすい/劉慈欣『三体』

三体

三体

(ベストセラーのくせに)意外にも、アホみたいにスケール広げたバカSF一歩手前の小説といった感じで、けっこう楽しめた。特に後半1/3ぐらいの面白さはホンモノ。ただ、そこに至るまでがけっこうかったるくてしんどかった。変な話だが、「円」のほうがきれいにまとまってて、あっち読んだときのほうが衝撃的だった。

その一方で驚愕したのが異様な読みやすさ。ちょっと翻訳SFとは思えない日本語の自然さで、するすると最後まで読めた。劉慈欣の原文が読みやすいのか、英訳者のケン・リュウが綺麗に訳したのか、それとも日本の訳者陣のおかげなのかはよくわからないが、何にせよすばらしい。確かにSF入門にこれを勧めるのはアリかも。

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敵を撃たなくたってFPSは楽しいです/「Portal」

store.steampowered.com
4時間くらいでサクッと楽しめる、非常に面白いパズルFPSだった。ルール自体はかなりシンプルなんだけど、そのルールをフル活用して非常に凝った謎解きを作ってくれる。スプラ2の「オクト・エキスパンション」に近いかな。SFっぽい背景ストーリーを明示はせずに伝えるのもうまい。

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当代最高のSF作家の、オーソドックスなSF短編集/テッド・チャン『息吹』

息吹

息吹

当代最高のSF作家テッド・チャンの、17年ぶりに刊行された第2短編集。オーソドックスなテーマを扱いながら、チャン流の文学的な味付けと情報の圧縮により、大変キレのある短編揃いとなっている。

ひとつだけ気になったのは、『あなたの人生の物語』との方向性の違いか。『あなたの人生の物語』はとてもすばらしい短編集なんだけど、かなり変な小説も多かった。それと比較すると本書に収録された小説はかなり正統派SFが多いように思う。単純にぼくの好みとしては変な小説のほうが好きかなあ。でも短編の完成度はどちらも高いです。

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