丸谷才一の嗅覚の鋭さに舌を巻くなど/マイケル・ルイス『マネー・ボール』

 データ分析を駆使して貧乏球団を強いチームに変化させる、という話ですごく面白い。異世界転生モノに片足突っ込んでる。この話の主人公ともいえるゼネラルマネージャーのビリー・ビーンが、「データ分析によって組織を改革する人」の典型的なイメージからはかけ離れているのもポイント。

が、ぼくがこの本を読んで一番驚いたのは、後ろに丸谷才一による書評が載っていること。まさかあの高名な文学者サマが、こんな金と野球とデータの話ばっかりしてるような下品な本をお読みになり、あまつさえ絶賛書評まで書かれるとは。おみそれしました。

PCゲームの到達点のひとつ/「Doki Doki Literature Club!」

よかったー。ストーリーとかメタフィクション的な仕掛けはわりとオーソドックスではあるんだけど、PCゲームという形式をフルに生かした表現には驚いた。ホラゲー(ブラクラゲー?)としても悪くない。無料で4~5時間ぐらいでクリアできるゲームなので、気軽にやってみては。

一面すぎる雪景色/「Horizon Zero Dawn 凍てついた大地」

 まず単純に、あの魅力的なホライゾンの世界が広がる、というだけで嬉しい。ホライゾンの世界が増えた分だけ単純に面白さが増えるので、これにはケチのつけようがない。またストーリーも、ほどよく感動的になっていてよかった。本編よりこっちのほうが感情移入できた、という人もけっこういるんじゃないだろうか。

一方で残念だったのは一面の雪景色。いや雪景色自体は綺麗でいいんですけど、この追加コンテンツで増えたステージ全部が同じような景色なので、若干飽きがきてしまう。雪を活かしたギミックがあるわけでもなく(スキーとかあったらなあ)、むしろ吹雪で視界が制限されることがあったりして、そこは惜しかった。

世界設定もっと知りたければ/塩谷直義「劇場版 PSYCHO-PASS」

 お話としてはしょぼいのひとことに尽きて、1期2期でやたら抽象的な話やったあとに今更独裁者かよーって感じ。テレビアニメとして3話くらい使ってやるならまあアリだとは思うかもしれないが、映画だと肩透かし気味。公安の面々もあんまり活躍してないしなー(霜月が立派に局長の犬になっていたのはよかったけど)。

それでもちょっと気になったのは、実は1期2期ではほぼ触れられていなかった海外の話。えっシビュラみたいなものって日本だけでしか使われてないの!? そーいえばあまり海外の話出てこなかったような……。シビュラをSaaSみたいな感じで他国に貸し出すっていうのもけっこうおもしろいと思う(あんまりアイデアとして活きてなかったけど。思いっきり不正使用されちゃってるし)。まあなんか今後おもしろいものが出てくる可能性はあるよなーとは思った。

反知性主義のせいなのか石器時代の心のせいなのかどっちつかず/三井誠『ルポ 人は科学が苦手』

ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から (光文社新書)

ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から (光文社新書)

 

 この本の帯には「現代人には石器時代の心が宿っている」とある。なので、進化心理学援用しつつアメリカの科学関連の話をルポルタージュするのかなーと思って読んでみると、これがいまいちはっきりとしない。一応進化心理学の話もちょこちょこは出てくるけど、それよりもこの本の主題になって(しまって)いるのは「反知性主義」(ホフスタッター的な意味の方の)だ。

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