どういう層を狙ったのかさっぱりわからない、イノセントな邪悪さ/伊原大貴『恋するワンピース(1)』

恋するワンピース 1 (ジャンプコミックス)

恋するワンピース 1 (ジャンプコミックス)

 

 アメトークのワンピース芸人の回とかを思い浮かべればわかりやすいんだけど、ワンピースファンってどことなくイノセントというか、まあそういう感じの雰囲気があるじゃないですか。ぼくはワンピースはなんだかんだで今も読み続けるくらい好きなんだけど、そのイノセントな感じにちょっと抵抗があって、あんまりファンだとは言っていなかった。

で、『恋するワンピース』である。このマンガのすごいところはイノセントな邪悪さ。ワンピースの名言をパロディするのと同じテンションで気軽に放火したりするところが本当に邪悪で倫理観に欠けていて、腹を抱えて笑いました。パロディが有名なものから異様にコアなものまであるのもポイント高い(蟹手のジャイロって誰だよ)。

しかしこれ、どういう層にウケると思ったのかだけはさっぱりわからない。いやまあぼくみたいに邪悪な人間はこういうマンガ好きだと思うけど、そういう人ってあんまワンピース読んでるイメージないし。それとも編集部的にはこれが純粋なワンピースファンにウケると思ったんだろうか……。

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どんどん仲間が死んでいく/「DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー2」

ATLUS BEST COLLECTION DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~

ATLUS BEST COLLECTION DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~

 

 ゲーム自体の完成度は前作に引き続きとても高い。前作の良い部分を全面的に受け継いだ上で、それを邪魔しない追加要素もちょこちょこあり、古いゲームのくせにわりと快適。ストーリーもそこそこ意外性があり、ちゃんと1の未消化な部分を消化してくれる。

ただすごく気になったのが、パーティからキャラクターが離脱することがかなり多いこと。単純に好きなキャラが(一時的とはいえ)使えなくなるのは寂しいし、控えキャラのスキルが十分育っていないせいで攻略に苦労するという問題もある。まあハードな世界観だからといわれてしまえば納得するしかないですが……。

 

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まあアバチュ2やります/「DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー」

ATLUS BEST COLLECTION DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー~

ATLUS BEST COLLECTION DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー~

 

 続編ありきのゲームであることを除けば、かなり完成度の高いゲーム。敵を意識的に「食べる」ことによる成長とかも背徳的で面白いし、他のメガテンでは選択式だったスキルが着脱式になっているのも、プレスターンバトルという戦闘システムと噛み合っていていい。けっこう道中の敵が手強くて、ちゃんとスキル整えてないとポンポン死んだり死にかけたりするのもいい具合のバランス。

ストーリーもそれなりに見どころあって面白い。ただまあアバチュ2やらんとなんにもわからないといえばその通りっぽいので、まあアバチュ2やってからまた感想書きます。

 

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第9回Twitter文学賞

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 

第9回Twitter文学賞に投票しました。投票したのは名倉編『異セカイ系』(講談社タイガ)およびケン・リュウ編『折りたたみ北京』(早川書房)です。詳しい感想は以下の書評の通り。

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作家カタログとしての側面がほしい/ヤロスラフ・オルシャ・jr編『チェコSF短編小説集』

チェコSF短編小説集 (平凡社ライブラリー)

チェコSF短編小説集 (平凡社ライブラリー)

 

 チェコで書かれたSF短編小説を集めたアンソロジー。正直あまり馴染みのない地域ではあるが、ほどほどの地域性とほどほどの普遍性を兼ね備えた佳作が揃っていてわりと満足。

ただ、この手のアンソロジーが抱える問題として、この本を通じて新しく出会える本が少なすぎる、という問題はある。ぼくはアンソロジーを「作家カタログ」としても使っているんだけど、日本に紹介されていない作家が多すぎて、この本の場合はそういう使い方はできない。これは以前読んだ『折りたたみ北京』とも共通する問題ではあるんだけど、『折りたたみ北京』の場合は現代中国SFの紹介なので、今後どんどん日本に翻訳される可能性はある。一方、この本の場合はかなり広い年代を扱っているにもかかわらずほとんどの作家が翻訳されていないので、今後にもあまり期待できないと思う。

個別の作品で特に印象に残ったのはヤロスラフ・ハシェクオーストリアの税関」。この短編集の中でも一番古い作品で、かなり短い小説にもかかわらず、ものすごい新鮮さを感じた。「古びない」ってこういうことなんだろうねえ。その他、経済SFとして楽しめるヨゼフ・ネスヴァドバ「裏目に出た発明」や、ケネディの人生を下敷きにしためちゃくちゃなバカSFパヴェル・コサチーク「クレー射撃にみたてた月飛行」が好み。

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