テンポが悪くたって戦闘さえ面白ければ/「バテン・カイトス」

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海

 

 すげーーおもしろい戦闘システムだねこれ、基本的にはトランプのポーカーとスピードを組み合わせたようなシステムで、RPGなのにまったく油断することができず、最後まで飽きずにザコ戦からボス戦まで楽しめる。

またストーリーもけっこう攻めてて、普通にゲームを進めていたら驚きの展開に遭遇することは確実。まあ王道から若干外したことの代償(?)で主人公カラスが妙に主人公っぽくないみたいな欠点もあるが、平々凡々なストーリーを見せられるよりはずっとマシ。

あと個人的にすごい好印象だったのが、ダンジョンの簡潔さ。このゲームはザコ戦でもそこそこ戦闘時間がかかるため、時間のバランスを調整するためにダンジョンを簡潔にしたんだと思うんだけど、その調整がうまい。(一部のダンジョンを除けば)大きすぎないダンジョンで、でもある程度の謎解きを入れたりして簡潔すぎないようにしていて、非常に親しみやすいと思った。

 

一方欠点はテンポの悪さ。前述の通りザコ戦でもそこそこ戦闘時間がかかるのは、凝った戦闘システムの代償だから仕方がないとしても、移動速度がやたら遅かったりして街の探索でも無駄に時間がかかるのはいただけない。このゲームはやりこみ要素がかなり充実しているのも、テンポの悪さとうまく噛み合ってない。

あと、ラスボスはかなり弱い。こちら側がフルコンボを成功させれば6000ダメージぐらい出すことができるのに、どうもラスボスのHPは20000くらいしかないみたいで、あっさりラスボスを倒してしまった。第3形態あるよね?? あるよね??? って思っていたらそのままエンディングに入ってしまったのが印象的。

 

ということで、戦闘システムに慣れてしまったらわりとヌルいゲームではあるが、それでも「戦っているだけで楽しい」みたいなレベルにはなっていると思う。おすすめです。

ゼロ年代キャラクター小説の絞り汁/名倉編『異セカイ系』

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 まあゼロ年代キャラクター小説の絞り汁みたいな小説で、ちょっとその味の濃さにびっくりしてしまう感じはあり、「ゼロ年代から出てくるなよ」と言いたくもなってはしまうんですが、ミステリーとしてもSFとしてもキャラクター小説としてもよくできてるんだからしょうがない。問題意識がかなり極端なので受け入れがたい読者はたくさんいるとは思うんですが、それでもゼロ年代のフィクションをそこそこ楽しんだオタクとしては、ああ心地いいなと思ってしまいます。

ただ唯一ケチつけたいのは関西弁の口語体。方言、改行のない「」の畳み掛け、フォントいじり、小説のテーマ、そして直接の言及があるので、たぶん舞城王太郎を意識しているんだと思うんですが、まあかなり読みにくい。1ページ目からそのノリなので、慣れるまでにだいぶ時間がかかった。

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一発屋芸人だって十人十色なんです/山田ルイ53世『一発屋芸人列伝』

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝

 

 「一発屋芸人」と呼ばれているお笑い芸人の現在・過去・未来を、これまた一発屋芸人と呼ばれることの多い髭男爵山田ルイ53世が取材したドキュメンタリー本。特徴的なのは、山田によるそれぞれの芸人の的確な分析だろう。プロの目線から、一発屋と呼ばれる人たちにも「力のある一発屋」「力のない一発屋」があることが暴かれるのは読んでいて非常に痛快。また、(雑誌連載の書籍化だからということもあるが)1人の芸人に対して20ページくらいの文章量なので、あまり疲れずサクサク読めるという良さもある。

欠点としては、やや文体がくどいことか。文章自体はわりと面白いのでそれでもどうにか読めちゃうんだけど。あとはまあ、ある程度お笑い芸人に興味がないとあまり楽しめないとは思う。

喪女がモテるためにはタイムスリップをすればいい/佐々木陽子『タイムスリップオタガール(1~3)』

タイムスリップオタガール(1) (ポラリスCOMICS)

タイムスリップオタガール(1) (ポラリスCOMICS)

 

 女オタクのノリの良い部分も悪い部分も出てる作品で、読んでて疲れるけど面白い。主人公はとこから女の子のドキドキ感があんまり伝わってこないので少女漫画っぽくないなーとは思うが、その一方ではとこの可愛い面がいっぱい見れるので、男性向けラブコメっぽい楽しみ方はできる。

そんなことより驚いたのは、タイムスリップという設定と喪女少女漫画の相性の良さ。喪女をどうやってモテさせるかというのは少女漫画にとっての永遠の課題の一つだと思うんだけど、中身がある程度成熟した状態ならそりゃーモテるわ、と目からウロコ。喪女がモテる過程の自然さにただただ感動してました。というわけで、喪女のみなさんはモテるためにタイムスリップしましょー(ついでに喪男はモテるために異世界転生しましょーね)。

 

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