伏線回収よくできました/野崎まど『2』

 

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

 

 よーーーーーやく最原シリーズ全部読み終えました。途中、悪い意味でけっこうひどい作品もあったけど(『パーフェクトフレンド』とか)、ここまでうまくまとめられるのならわざわざ6冊全部読む価値すらあると思う。

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違法アップロードをめぐる群像劇/ウィット『誰が音楽をタダにした?』

 

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (早川書房)

 

 違法アップロードなどといった、アングラかつ明らかに違法な文化は、なかなかその実態が後世に伝わらない。そういう文化を文化史として伝えようとしたがる人もいなくはないけど(ぼくはニコニコ動画とかを念頭に置いている。ニコニコの文化史とか全然整理されないよねー)、そういう人もたいていは思いつきで動いているので、学問レベルはおろかドキュメンタリーレベルの文章が書かれることすら珍しい。

そういう文脈で考えると、本書は、なかなか触れづらい「違法アップロード」の文化の一旦を調べた、貴重なドキュメンタリーといえる。丹念なインタビューや資料収集に裏付けられている立派な本です。

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象牙と進化論リテラシー

news.livedoor.com

おー、「進化」ですかあ……。

ぼくは、結構な割合の人間が、ダーウィニズムすらちゃんと理解していないということをなんとなく知っているので、まあ驚きはしないけれども、あらためてこう見せられるとげんなり。

ところで、こういう進化論リテラシーの低さって日本特有のものなの? それとも世界レベルで普遍的に見られるものなの? ということで元ネタの記事にも目を通してみた。

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ガリ勉っていいよね/ろびこ『となりの怪物くん(1~13)』

 

 高校生のとき、ぼくは全然真面目に授業を受けてなかったんだけど、幸いなことにぼくはそこそこ(というか成績だと学年トップレベルで)頭が良かったので、非モテとはいえ楽しい高校生活を送っていたと思う。友達もまあいたし、それなりに部活もがんばってたし、テストや模試ではかなりいい成績をとっていたと思う。

そういう、意外と学生生活が充実していた人間から見ると、ガリ勉の女の子っていうのはどうにも不思議な生物に見える。ぼくのクラスにいたガリ勉ちゃんは休み時間のあいだもずっと教科書を開いていたし、それでいて成績はぼくより悪かった(はずだ)し、大変傲慢ながら、なんでそんなことをしているんだろうとずっと思っていた。ただ今思い返してみると、そういうオブセッションがあったのかなーとか、まあまあ想像できなくもない。

このマンガのヒロイン・水谷さんは、そういうオブセッション持ちの不器用な女の子。そういう子が、ニンゲンシャカイとやらに巻き込まれて不器用ながらもうまく折り合いをつけていく姿は、なんだかんだで大変可愛らしい。というわけで、頭いいけど性格が捻くれに捻くれている高学歴の方とかだとものすごく楽しめるのではないでしょうか。

 

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いまさら古典部といわれても/米澤穂信『いまさら翼といわれても』

 

 だって『ふたりの距離の概算』から6年ぶりですよ6年ぶり。米澤は決して筆が遅い作家ではないのに、しかも短編集なのに。

とはいえさすがにここ数年ミステリーで異様な人気を博しているだけあって、どの短篇も及第点には達している。ついでに米澤は小説家として(ミステリー作家として、ではなく)器用でもあるので、十分楽しめます。
ただ、これは個人的な問題なんだけれども、早坂吝『虹の歯ブラシ』を読んでからというものミステリーの短編集というものに対するハードルが上がっている。そのため、ぼくの評価は多少マイナスすぎるかもしれないので、その点はご注意を。あとネタバレもあるので注意。

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白石晃士って普通の映画も撮れるのね!/白石晃士「貞子vs伽椰子」

 

 遅ればせながらようやく見ましたが、白石晃士って普通の映画も撮れるんですね! 普段フェイク・ドキュメンタリーばっか撮ってるから、それが悪影響を及ぼしているかと思いきや、撮り方の違和感は全然なかった。

ぼくがホラー苦手というのはあるけど、特に前半はホラーとしてもちゃんと成り立っていると思う(傑作とまでは言えないが……)。とかいいつつ、「コワすぎ!」的な白石晃士独自のおもしろさもうまくブレンドされていて、後半はバカ映画として、それはそれで成立している。

 民俗学とかミームとか集合無意識とかみたいな衒学趣味はあんまりうまく機能してないと思うけど、その一方で現代都市伝説としてスマホとかネットとか機械系のジャンクショップとかを利用しているのはうまい。白石晃士はプロットとか伏線とかはけっこう丁寧に作るタイプの監督なのでまあ当然といえば当然だけど。

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79円で買えるぞ! 急いで買え!/浅野典夫監修『マンガでわかる 今を読み解く世界史』

 

マンガでわかる 今を読み解く世界史講義

マンガでわかる 今を読み解く世界史講義

 

 監修者は「世界史講義録」で有名な浅野典夫で、内容は可もなく不可もなく。南米とかアフリカあたりが明らかに手薄とはいえ、「今を読み解く」みたいな池上彰感あふれるコンセプトで世界史の講義本を作っても、思ったよりカバーできるんですね。教養としてはこれぐらいでもまあいいのかも。

 

……っていうだけだったら別に1300円も出してこんなマンガ買う必要はないんだけど、なぜかこの本のkindle版は、なんと1217ポイントもつくのだ!!! いやーびっくりしちゃって思わず買っちゃいましたよ。はっきりいって1300円の価値はないけど、100円なら受験で世界史使ってない人間(ぼくとか)にとっては十分だと思う。

 

12/20追記

なんかいつのまにかポイント普通に戻ってた。それだとこの本買う意味はあんまないと思う。ちょっと奮発してマクニールとか読んだほうが……。