特にここ最近評判の良くなってきた、松尾匡、ブレイディみかこ、山本太郎あたりの、経済成長(というか反緊縮)をちゃんと意識する左翼への、北田暁大、栗原裕一郎、後藤和智というこれまたおもしろいメンツによる援護射撃。ぼくが過去に書いた書評を見てもわかる通り、ぼくもだいたい松尾らと同じ立場なので、この本も褒めたいところだが……。
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理性の起源: 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ (河出ブックス 101)
副題詐欺。ぼくたちが一見すると「愚かすぎる」のはなぜなのか? という疑問については、かなり詳しく、説得的に説明してくれる。しかし、なぜぼくたちはこんなに「賢すぎる」のか? という、もう一つの疑問にはあまりしっかり答えてくれない。なので、いい本なんだけど尻すぼみになってしまっていると思う。
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日本ではまだちゃんと紹介されていないポストモダン以降の哲学を簡潔に紹介した本。この手の本はまだあまりなく、一応戸田山和久『哲学入門』もあるけど、あれは思いっきり自然主義に偏った本なので、ぼくは好きだけど中立性は薄い。この本は、かなり中立的な立場に立っているように思えるので、そのへんは心配しなくても大丈夫。
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全体的にはいまいち。戦闘シーンがかなりわかりづらく、長々としたセリフをいちいち追いかけながら何が起こっているのかを文字で(!)把握しなければいけないので、かなーりテンポが悪い(ぼくは面倒になったので途中から流し読みした)。設定やストーリーも、驚きでひっくり返ってしまうようなレベルではない。
一応ちゃんと言っておくと、設定もストーリーも、「そこそこ」よくできたものではある。でも「そこそこ」でしかない。だから小説でもマンガでも映画でもゲームでも、これより面白い話自体はいくらでもあると思う。
ただし、真ヒロイン白羽衣つむぎのキャラクター造形だけはずば抜けてすばらしい。どう見ても男性器にしか見えないグロい造形のくせにいちいち可愛らしく感じてしまうというだけでもすごいと思う。この「萌えられる異形」を描くことができることを活かして、いっそフェチ全開で谷風長道ハーレムの半分くらいを気持ち悪い異形キャラにしてくれたら、もうちょっと見どころのあるマンガになったとは思うんだけど……。
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自称リベラルの隠れ差別主義者どもも普通の差別主義者といっしょにまとめてくたばっちまえという感じの、かなりしっかりとしたメッセージ性。肉食動物に対する差別まできっちりと描いているのはよいこと。それから、ストーリーの構成がかなりしっかりしており、映画というメディアで見ていて十分に楽しめるという範囲の中で最大限に伏線を張り巡らせている。
ちょっと気になったのは、もともと「ズートピア」という都市が何なのかがよくわからなかったということ。ああいう理念先行の都市が成立し、内部のダメさがうまく周りに伝わらないまま田舎の人間に理想郷として崇められる、というのは、あまり現実的ではないかなー。
おまけ。最近この映画を見た他の人の意見で、トランプが大統領になったことを引き合いに出して、トランプ(とその支持者)がこの映画をどう思うのか、みたいな感じで彼らを批判するようなものを見かけた。でも、彼らが怒り狂っている対象は、まさに副市長のヒツジがやっていたような逆差別だ。だから、彼らは都合のいいところをうまーく引用しつつ、この映画を褒めるんじゃないかな。