そんなに一生懸命「伊藤計劃以後」を終わらせなくてもいいんじゃないの/赤野工作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

 

 ぼくは、円城塔twitterでこの小説を絶賛してるのを見てこの小説を知った。そして、一つの疑問を抱いた。なんで円城はこの小説を褒めているの?

この小説は、表向きは、架空のゲームレビューの体裁をとったメタフィクションである。ちょっと小説について詳しい人は、すぐにボルヘスとレムを思い浮かべるであろう。もちろん一定のオリジナリティはあるけれども、あまり斬新というわけでもない。

ゲームオタクがこの小説をすごいすごいと褒めるのは、わりと容易に想像できた。でも、円城がこの小説を褒めるというのはよくわからなかった。だって円城は、別にゲームオタクというわけではない(はず)。twitterでも彼がゲームの話をしているのはほとんど見たことがないし、彼の小説でも、ネットミームのパロディを除けばゲームの話なんてしていた記憶がない。そんな円城が、この小説を褒めるってどういうこと?

そんな疑問を抱きながら、ぼくはこの小説を読み始めた。そしてこの小説を読み進めるうちに、その疑問への答えが見つかった、かもしれない。

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名前入力にイラつくシミュレーションゲームってヤバない?/「バーガーバーガー」

バーガーバーガー ベスト

バーガーバーガー ベスト

 

 もちろん、飲食店経営ゲームとしてまあまあしっかりしていることは認めます。メニュー作りは楽しいし、どこに店を置くかとかどんなノウハウに投資するとか色々考えるのもシミュレーションゲームの醍醐味だ。

が、ゲームの中身自体が楽しいのに、UIがそれを邪魔することがけっこう多い。個人的に一番きつかったのが、名前入力(!)。いや名前入力でストレスの貯まるゲームってどんなゲームだよ、と思うかもしれないんだけど、本当にややこしくてイライラするのだ。とにかく一般的な名前入力画面の構成をガン無視した設計をしていて、たとえば×ボタンは「1文字消す」ではなく「前の画面に戻る」で、じゃあ「1文字消す」□ボタンを押せば1文字消えるのかというとそうではなく、L1ボタンで1文字前の文字を指定しないと最後の文字は消えなく……みたいな感じで、言葉に表現しづらいんだけどとにかく操作に慣れない。しかもこの操作を、メニューの作成で何回もするわけだから、とてつもなくイライラするというのは自明でしょう。

 

ということでそーとーストレスが貯まること間違いなし。でも、運の要素も結構多いし(食材が手に入るのはランダム)、半年に1回のペースぐらいで再プレイしたくなるタイプのゲームかも。

主催者が積極的に介入するデスゲームってどうなの/「ダンガンロンパ」

 まずは良い点から。特に驚いたのは、ペーパークラフトとアニメ絵のあいのこみたいな、公式曰く「2.5D」のマップ。絶妙にアニメ感を保ちつつ、見るに耐えうる3Dマップを作ったというのにびっくりした。

また、要の推理も悪くはない。ミステリー読みにとっては定番といえるトリックも多く、話の大筋については捜査の時点で概ね予想がつくものの、細部を詰める楽しさは健在。

 

でも不満な点も多い。ラノベちっくな世界設定およびキャラ設定が受け入れられなかったのは、歳をとってしまったぼくが悪いとしても、だ。

システム面で不満なのは、裁判パートのアクション(STG?)要素があまり面白くない点。「逆転裁判」的なシステムを踏襲しつつ、そこから1歩進化したものを作りたかった、というのはわかるんだけど、それでも擁護できません。特に、事件の真相をマンガのコマにして完成させる「クライマックス推理」は、どの絵が何を表しているのかわかりづらくとてもストレスフル。

さらに、そんなことよりもストーリー面で気になるのは、主催者が積極的にデスゲームに介入している点。デスゲームの美徳っていうのは、ある程度限定された状況下で、参加者の理性的(あるいは非理性的)思考が死を導いてしまう、というところだと、ぼくは思っていた。だってそうじゃないと、「人間の本性としての悪」みたいなものを表現できないはず。ところがこのゲームでは、主催者がガンガン殺人を唆す。えーそれでいいの? だってそれって、「権力を持っている人が強い」ってことを表しているだけじゃん。

 

ということで、推理ゲームとしては悪くないんだけどいろいろ不満。まあカップリング版でプレイしたので、2も一応やってみますが……。

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みんな結構いい回線使ってるのねー/「スプラトゥーン2」

Splatoon 2 (スプラトゥーン2)

Splatoon 2 (スプラトゥーン2)

 

 前作をプレイしたことはなかったんだけど、実況動画などで見ていてすごく面白そうだったので、わざわざニンテンドースイッチまで買って、こちらも購入しました。で、やろうと思ったんだけど……。

なんと、我が家の回線がショボすぎてオンライン対戦ができない!!! で、1人プレイできるヒーローモードをとりあえずプレイしてみたんだけど、これが全然面白くない。というわけで残念なことに、我が家のニンテンドースイッチはでかい箱と化したのであった……。

 

というのが1ヶ月前のお話。その後、我が家のネット回線自体が絶不調になってしまったので、臨時でポケットWi-Fiを借りたのだけど、そうしたらオンライン対戦ができるように!

で、そうなってから、暇な時間はずっと「スプラトゥーン2」漬けの毎日。いやーだって楽しいもん。休みの日は平気で10時間とかやってしまう。そりゃあブログの更新も滞りますよ。

 

ところで、このゲームは子供人気もすごいのだけど、それにもかかわらず、ぼくみたいに家のネット回線が貧弱すぎてオンライン対戦ができない、という話はそこまで聞かないように思う。でも、子供が自分の家のネット回線の契約をどうこうできるはずもないので、多分世の中の多くの家のネット回線は、「スプラトゥーン2」のオンライン対戦をできる程度にはまともな回線なのだろう。

ぼく的には、これがかなり意外に思えた。いやーみんな結構いい回線使ってるのね(うらやましいわぁ)。

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なんで江野くんこんなことやってるの?/白石晃士「殺人ワークショップ」

殺人ワークショップ [DVD]

殺人ワークショップ [DVD]

 

 「コワすぎ!」を一気に見て大変面白かったのでこちらも見てみた。わりとおもしろいね―。題名にもなっている「ワークショップ」があんまり活きておらず、単なる集団殺人計画っぽくなっているのは残念な一方、軽い気持ちで殺人衝動を持った主人公たちがどんどんサイコになっていく過程はなかなかよい。また、クズに定評のある白石晃士は健在で、DV彼氏やバイト仲間をいじめていたチンピラ2人組なんかはすさまじいリアリティ。

ENBUゼミナールという学校の映像俳優コースの学生の作った卒業作品が元になっているらしく、出ている俳優も多くが素人だったため、演技の腕の差にばらつきがあったのは気になる。主人公であるモリアキコ(木内彬子)はわりと、被DV女からのサイコみたいな雰囲気が出ていてよかったのだけど、自称猟奇趣味のユウマ(杉木悠真)とかはダメダメだったのは残念。

 

ところで「オカルト」で概念となった江野祥平(宇野祥平)は、なんでこんなことをやってるのかしら? 「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章」では、白石晃士(=田代)を助けるという目的が見え隠れしていたから、江野くんが出たのもそれなりに納得できるのだけど、こちらはあまり納得できず。冒頭およびラストで江野くんが渋谷のスクランブル交差点を歩いているシーンを見る限り、確実に「オカルト」と関連はあるはずなのだけれど……結局よくわからん。