いくらストーリー自体が魅力的でも/「レイジングループ」

 人狼に興味を持って、でもいきなりプレイするのはちょっとハードル高いかなと思ったので、とりあえず試しにやってみたのがこのゲーム。人狼を題材にしたノベルゲームで、評判もそこそこよかったのでやってみた。

で、感想としては、ストーリーはけっこう面白かった。人狼要素を無理なくノベルゲームに吸収してうまくストーリーを構築している。自由度が若干薄いとか、終盤はほとんど人狼要素がなくて神話の話をしてるとか、不満点もまああるが、大目に見れるレベル。

また、ノベルゲームの構造そのものをループものとして扱っているのもけっこうよかった。特定のルートを選ぶごとに開放される「キーシステム」との相性は抜群で、まさにアドベンチャーゲームのように楽しめるという側面もある。

 

 

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木下古栗と反緊縮

 東日本大震災の少しあとに出版された『早稲田文学 記録増刊 震災とフィクションの”距離”』という雑誌がある。雑誌名から容易にわかるように、震災のことについてみんなで執筆しましょう、というアレだ。

で、この雑誌に、木下古栗が「カンブリア宮殿爆破計画」というろくでもないタイトルの短編小説を寄稿している。タイトルからわかるように村上龍を元ネタにした小説で、村上龍みたいな意識たかそーなくせに震災にかこつけてなんか言おうとする連中を、木下古栗お得意の破滅的文体でまとめて成敗しようという、(木下古栗にしては)わりと真面目な短編小説なんだけど……。

 

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延々と関係性を付与し続ける究極の群像連作短篇集/やまもり三香『シュガーズ(1〜6)』

このマンガの構成は独特である。ただしやってることは至極単純で、人物を登場させ、その間に関係性を与え続けるだけである。それだけならどの少女マンガでもやっている。

『シュガーズ』がそれら普通の少女マンガと違うのは、それを群像劇という形でやったところ。するとどうなるか。関係性の増えるスピードが、格段に上昇するのである。この漫画はたった6巻しかないのだけど、それだけでも関係性が複雑すぎて、(少なくともぼくには)まったく把握のできない関係性の集合体となっている。

これはぼくの持論なんだけど、少女マンガは関係性を楽しむものである。そういう立場を取るとするのであれば、このマンガは究極の少女マンガといえるだろう。

 

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半自動食人百合物語生成機/矢部嵩『〔少女庭国〕』

〔少女庭国〕

〔少女庭国〕

 

 おもしろい。ポリコレ的には女子中学生という存在を悪い趣味のために弄ぶ創作物なので非常にアレですが、ともかくおもしろい。不条理な設定の中でのバトルロイヤルを延々と突き詰めていったら、少女たちは殺し合いには飽き足らず町を作るわ共同体を作るは奴隷制度を作るわ食人をするわでとんでもない物語が展開されていく。そしてその中に、ほのかな百合も忘れない。

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スプラトゥーンってまだまだいろんな遊び方ができるんだね/「スプラトゥーン2 オクト・エキスパンション」

 値段の割には十分面白かった。インクを撃って敵を倒す、というシンプルなゲーム性をもとに、「メタルギアソリッド」みたいなステルスゲーからビリヤードまで、バリエーション豊富なミニゲームを作れるというのは、やはりすごい。スプラトゥーンってまだまだいろんな遊び方ができるんだね、ということを実感させてくれる。これでマリオメーカーみたいに好きな遊び方を開発できるツールがあれば……(流石に無理か)。

あと、コンプリートはともかく単純にクリアするだけならそんなに時間がかからない、というステージ構成もポイント高い。プレイヤーの中には、実際はミニゲームにはそこまで興味なくて、とにかくクリア特典のタコを使いたい、という人もいるだろうから、そういうふうに楽させてくれるのはよいこと。