書評

というか円城塔ってこんなに長編少なかったのね/円城塔『エピローグ』

エピローグ (ハヤカワ文庫JA) 作者: 円城塔 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/02/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る この壮大な一冊を読んで、真っ先に思い出したのは円城塔のデビュー作『Self-Reference ENGINE』だ。あれも相当な巨編だ…

何をどう扱おうとも円城塔は円城塔である/円城塔『文字渦』

文字渦 作者: 円城塔 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/07/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る この連作短編集の特徴は2つ。1つはほとんどが文字についての小説だということで、もう1つは和風・中華風だということだ。 前者につい…

村田沙耶香の脳内を見せてくれる貴重な本/村田沙耶香『となりの脳世界』

となりの脳世界 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/10/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 村田沙耶香は、何を考えているのかだいぶわかりづらい人間だと思う。テレビとかに出ていてもすごく無害そうな表情…

ファンサービス満載ではあるんだけど/早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』

メーラーデーモンの戦慄 (講談社ノベルス) 作者: 早坂吝 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/09/07 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 上木らいちシリーズの集大成ではある。上木らいちシリーズの過去4作にたびたび言及し、さらにはゲストキャラ…

村田沙耶香の集大成兼寄せ集め/村田沙耶香『地球星人』

地球星人 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/08/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ある意味でこの小説は、村田沙耶香の小説の集大成といえるだろう。この小説には、過去に村田が書いてきたテーマがふんだんに詰め込まれ…

人文系ヘタレ中流インテリのための進化論入門/吉川浩満『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 作者: 吉川浩満 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/07/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 『理不尽な進化』の著者・吉川浩満によるエッセイ集。進化論や行動経済学によって大幅な転…

王道と思いきや変化球バンバン投げてくる/森下suu『日々蝶々(1~12)』

日々蝶々 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者: 森下suu 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/04/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 基本的には、まともに男と喋れない女の子とまともに女と喋れない男の子による、王道少女漫画ではあ…

延々と関係性を付与し続ける究極の群像連作短篇集/やまもり三香『シュガーズ(1〜6)』

シュガーズ 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者: やまもり三香 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/03/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る このマンガの構成は独特である。ただしやってることは至極単純で、人物を登場させ、その間に…

半自動食人百合物語生成機/矢部嵩『〔少女庭国〕』

〔少女庭国〕 作者: 矢部嵩 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/05/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る おもしろい。ポリコレ的には女子中学生という存在を悪い趣味のために弄ぶ創作物なので非常にアレですが、ともかくおもしろ…

高度に発達したミステリーはAIと区別がつかない/早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』

探偵AIのリアル・ディープラーニング(新潮文庫) 作者: 早坂吝 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/06/08 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る これはすごい。なにがすごいかというと、「AIが考えた犯罪」と「AIが考えた推理」のそれっぽさが…

二重のパラノイアに取り憑かれたトンデモ奇書/ピエール・バイヤール『アクロイドを殺したのはだれか』

アクロイドを殺したのはだれか 作者: ピエールバイヤール,Pierre Bayard,大浦康介 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2001/09 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (16件) を見る 本書はなかなかの奇書だ。ただそれは、著者ピエール・バイ…

やっぱ女子高生と付き合おうとする先生なんてクズだよね~/やまもり三香『ひるなかの流星(1~12)』

ひるなかの流星 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者: やまもり三香 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/01/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る やっぱり、女子高生と付き合おうとする先生なんてクズだと思う。もちろん、2次元のなか…

両手に舞城王太郎を吸い込んでできあがった異形のマンガ/大暮維人、舞城王太郎『バイオーグ・トリニティ(1~14)』

バイオーグ・トリニティ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者: 大暮維人,舞城王太郎 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/08/19 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る まさに「舞城王太郎のコミカライズ」。愛は祈りだだの世界は密…

世界はポエムでできている/舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

ディスコ探偵水曜日(上)(新潮文庫) 作者: 舞城王太郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ディスコ探偵水曜日(中)(新潮文庫) 作者: 舞城王太郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/29…

行き当たりばったりなシリーズだとようやく気づいた/十文字青『灰と幻想のグリムガル(12)」』

灰と幻想のグリムガル level.12 それはある島と竜を巡る伝説の始まり (オーバーラップ文庫) 作者: 十文字青 出版社/メーカー: オーバーラップ 発売日: 2018/03/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る ひっでえなーこれ。行き当たりばった…

世界観を再利用するとSF書くの楽なのかねー?/長谷敏司『My Humanity』

My Humanity 作者: 長谷敏司 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/10/30 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る 現在放送中のアニメ「BEATLESS」の原作者・長谷敏司による短編集。どの作品も一定水準以上の短編にはなっており、そのうち…

薄味ながら、白と黒のコントラストは圧巻/阿部共実『月曜日の友達(1~2)』

月曜日の友達(1) (ビッグコミックス) 作者: 阿部共実 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2017/09/08 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 正直ストーリーは薄味。いやもちろんだからといってまったくダメなわけではないんだけど、『ちー…

不条理だけが不条理小説じゃない/石川宗生『半分世界』

半分世界 (創元日本SF叢書) 作者: 石川宗生 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/01/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 不条理小説ではあるんだけど、不条理そのものだけではなく各所に散りばめられたユーモアがかなりおもしろい…

私小説とエッセイのあいだをいったりきたりする奇妙な小説(?)/円城塔『プロローグ』

プロローグ (文春文庫) 作者: 円城塔 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/02/09 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 話の筋を理解するのは大変むずかしいと思う。そもそも説明少なめのメタフィクションなので、一読でちゃんと話を理解させる気…

入試問題と誤読に学ぶ、ユニークな哲学の入門書/入不二基義『哲学の誤読』

哲学の誤読 ―入試現代文で哲学する! (ちくま新書) 作者: 入不二基義 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2007/12/01 メディア: 新書 購入: 8人 クリック: 95回 この商品を含むブログ (43件) を見る 「入試問題を素材に使った哲学入門書」というユニークな本…

カタツムリに渦巻く進化論の歴史/千葉聡『歌うカタツムリ』

歌うカタツムリ――進化とらせんの物語 (岩波科学ライブラリー) 作者: 千葉聡 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/06/14 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (6件) を見る 「カタツムリ研究の歴史」という、どうみてもニッチにしか見…

「ヤバい経済学」で涙ぐんでしまうとは/スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー『超ヤバい経済学』

超ヤバい経済学 作者: スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー,望月衛 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2010/09/23 メディア: 単行本 購入: 13人 クリック: 193回 この商品を含むブログ (58件) を見る 『ヤバい経済学』は、経済…

日本の労働社会のせいで日本は男女不平等なのかもしれない/濱口桂一郎『働く女子の運命』

働く女子の運命 (文春新書) 作者: 濱口桂一郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/01/15 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 日本がたいへん男女不平等な国だと言われているのは、各種ニュースでご存知の通り。先日話題となった、は…

社会人にとっては馴染みの薄い大学図書館の、手際の良い紹介/斉藤道子『首都圏 大学図書館ガイド』

首都圏 大学図書館ガイド オトナの知的空間案内 作者: 斉藤道子 出版社/メーカー: メイツ出版 発売日: 2015/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ぼくは一般的な人に比べると本を買うのにかける金額はかなり多いと思うんだけど、それでもウン…

最初は白なのにちょっとずつ黒ずんでいっていつの間にか真っ黒になる短編集/藤野可織『ドレス』

ドレス 作者: 藤野可織 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/11/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 藤野可織の小説の特徴をざっくり言語化するとすれば、「最初は白なのにちょっとずつ黒ずんでいっていつの間にか真っ黒になる小説」と…

良書だが、邦題は誤訳に近いのでは?/ティム・スペクター『ダイエットの科学』

ダイエットの科学―「これを食べれば健康になる」のウソを暴く 作者: ティム・スペクター,熊谷玲美 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2017/04/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私たちが食べるものが、私たちの健康にどのような影響を与えるの…

純文学版湊かなえ?/今村夏子『あひる』

あひる 作者: 今村夏子 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2016/12/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る どの短編も、短くまとまっており、それでいてなかなか破壊力がある。こういう作家は純文学系にはたくさんいそう(村田沙耶香とか藤野…

レーニンやスターリンがソ連SFを発展させた!? 衝撃のソ連文学史/カーツ『ソヴィエト・ファンタスチカの歴史』

ソヴィエト・ファンタスチカの歴史 (世界浪曼派) 作者: ルスタム・スヴャトスラーヴォヴィチカーツ,ロマンアルビトマン,Roman Arbitman,梅村博昭 出版社/メーカー: 共和国 発売日: 2017/06/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る おそらく…

そんなに一生懸命「伊藤計劃以後」を終わらせなくてもいいんじゃないの/赤野工作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム 作者: 赤野工作,石黒正数 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る ぼくは、円城塔がtwitterでこの小説を絶賛してるのを見てこの小説を知った。そして、…

幻想的な不条理ホラーの皮を被った傑作ガール・ミーツ・ガール/矢部嵩『魔女の子供はやってこない』

魔女の子供はやってこない (角川ホラー文庫) 作者: 矢部嵩,小島アジコ 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2013/12/25 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (11件) を見る 大傑作です。幻想的な不条理ホラーの皮を被りつつ、中身はめちゃめちゃよ…