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手法は面白い/白石晃士「ある優しき殺人者の記録」

映画

 

 手法はかなり意欲的だし面白いと思った。日本語と韓国語の両方がわかる人と日本語しかわからない人と韓国語しかわからない人がいて、通訳作業を繰り返しながらスローテンポで話が進んでいくっていう試みは、尺をうまく使いつつコミュニケーションの複雑さによるもどかしさを出していていい感じ。ノーカット風映像もかなりうまく作ってる。ぼくは編集点っぽい不自然なところは見つけられなかった。

そして斬新なのは、本物の意味での「カメラ視点」。カメラが田代(白石晃士)から殺人鬼サンジュン(ヨン・ジェウク)の手に渡って、最終的に時空を超えて映像を記録するっていうのは面白い。雑な扱いされたカメラくんに感情移入してしまうぐらいに、カメラとしての存在感を出している。

 

まあ、それだけ。殺人したら全員生き返るっていう「神からのお告げ」という狂気にだんだん田代やソヨン(キム・コッビ)が染まっていくところは見どころといえば見どころだけど、それこそ大傑作の「オカルト」でいいし。日本人カップルが寝取られ願望語りだしたりいきなりセックスするところとかも寒いと思う。

そしてそれ以上にオチがダメ。殺人鬼のモニュメンタリーやってたところからいきなりSFになるということの意外性は、白石作品初見ならともかく、何本か白石作品を見ている人にとっては意外でもなんでもないでしょう。そして超古典的な過去改変モノで、ストーリー的にはひねりもクソもない。独特なのはそれこそカメラの扱いぐらい。

というわけで、白石作品初見でもなければ見る意味はあまりないかも。