合理性とラブコメのあいだで/海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ(1~8)』

 

 おもしろい! 貧困とか晩婚とかセクシャルマイノリティみたいな妙に重いテーマを絶妙にラブコメに絡ませていて見事。修士卒でも就職難→派遣切り→無職とかもやたら生々しいし、ついでに平匡もみくりもたいしてイケメン/美人でもないので親近感も湧く。

創作物一般において、頭のいいキャラを書くのは難しい。なぜかというと、キャラクターの頭のよさは作者の頭のよさによって縛られるから。でも、『逃げ恥』の場合だとそういう違和感は結構少なかったのでそこも満足。契約結婚とか、ガチで頭のいい人たちのコミュニティでも冗談半分真面目半分で話されてそうなので、そこらへんも妙にリアルだなーと思った。

 

でもこれ、ドラマだとガッキー主演なのお? ガッキーくらい可愛かったら、修士卒でも余裕で顔採用されそう。市川実日子とかみたいな、可愛いけど絶妙に修士卒感ある人とかのほうがずっとそれっぽそう。星野源は、割りとありな気はするけど……。まあドラマ見てないので偉そうなことは言えませんが。

 

なお、絵は良く言えばシンプル、悪く言えば下手。ぼくは絵の上手い下手はあんまり作品に対する評価に影響しないほうだと思うけど、それでもちょっと気になったので、気にする人は結構気にすると思う。けどそのおかげで平匡やみくりのビジュアル的な魅力が減ってリアリティが増えてるという側面もあるので、むにゃむにゃ……。