11月読んで面白かった本のまとめ。
フランクファート『ウンコな議論』(ちくま学芸文庫)
扱ってる題材はけっこう身近なものではあるけど、そこは分析哲学の手法にのっとったものなので読んでて面白い本ではない。とんでもない間違いはないと思うけど。
しかし訳者解説が秀逸。フランクファートやこの本の立ち位置や思想的な流れに内容解説、さらには、この本ではボロクソに言われている「ウンコな議論」の使い道まで提示してくれており、分析哲学特有の痒いところに手が届かない感を解消してくれている。
訳もけっこう凝ってていいんだけど、なんで「吾輩」みたいな違和感の多い役割語を使ったのかは不明。普通の訳者ならそこまで文句言わないけど、役割語には一家言あるはずの山形浩生なので不満。
山本博文『歴史をつかむ技法』(新潮新書)
歴史学の考え方がコンパクトにまとまっている良書。類書である小田中直樹『歴史学って何だ?』 とかと比べても、コンパクトさで勝ってる。おまけで古代~近世の通史も扱っているのでお買い得感はあるけど、通史の内容は政治家の変遷に偏りすぎていて微妙。
斎藤美奈子『妊娠小説』(ちくま文庫)
再読したけどやはりメチャクチャながらメチャクチャ面白い。政策と関連した「妊娠小説ブーム」の盛衰の分析も見事だし、わけのわからない数式を持ち出して遊びだすあたりも笑っちゃう。
ドーキンス『進化とは何か』(早川書房)
進化論の入門書として無難な感じ。内容としては進化論にあんまり関係ない邪魔な科学論もどきなんかもあるけど、まあそれは講演の書籍化なのでしょーがない。写真や図もかなり多いし文章も平易なので中学生でも読める。巻末の訳者との対談はドーキンスの諸著作のあんちょこっぽくもなっているので、ここから他の本にすすめる(ぼくも読まなきゃ……)。
が、そんなことよりびっくりしたのは、SF作家のダグラス・アダムズがいきなり登場して、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の朗読をしたところ。調べてみたらドーキンスとアダムズはわりと仲良くて、無神論とかで共闘してたんだってねー。
米本昌平ほか『優生学と人間社会』(講談社現代新書)
- 作者: 米本昌平,ぬで島次郎,松原洋子,市野川容孝
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/07/19
- メディア: 新書
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単細胞な「優生学」像が広まってるからそれを正しましょうねーという本。ナチスとホロコーストと優生学って実はあんま関わってないとか、フランスではナショナリズムが優生学を抑制したとか、一般的なイメージとは結構違った優生学像が描かれていておもしろい。一応優生学の歴史的記述であるとはいえ、ヒトゲノム解読やら幹細胞やら、生命倫理で重要となるような技術が登場する前の本なのが欠点の一つなので、増補改訂版をぜひ。
吉田甫『学力低下をどう克服するか』(新曜社)
ここ最近話題の、掛け算・足し算の順序問題とかを考える上での参考に。詳しくはここ。
エミリー・オスター『お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント』(東洋経済新報社)
妊娠出産の常識が覆されたり覆されなかったり。ここ。