図書館と電撃文庫

 

要約

図書館の本は基本的に透明なブックカバーが貼られていて、本自体のカバーは取り外せないようになっている。そのことを利用して、カバー裏やカバー下にコンテンツを載せることによって、図書館や電子書籍などで読むのではなく、紙の本を買って読むインセンティブが発生するかもしれない。

 

 野崎まどのあまりおもしろくない短編集を読んだ。別にわざわざ買って読むほどの本じゃないので、図書館で読んで正解だった。

それはさておき。この本はカバー裏にも1本の短編小説が載っている。いかにも野崎まどらしい仕掛けだと思う。思うんだけど……ぼくは図書館でこの本を借りたので、その短編が読めない!!!!! このことに気づいたとき一瞬愕然とした(でもそのあとすぐに、まあ読めなくてもいいかと思ったけど)。

そもそも電撃文庫は、なぜかは知らないけど、カバー裏にコンテンツを載せることがあるレーベルである。時雨沢恵一キノの旅』のカバー裏に短編小説が載ってるとか、入間人間嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のカバー裏にイラストが載っているとかが有名か。他の例はちょっと記憶にないけど、それ以上に他のレーベルやら出版社やらでこういうことをやっている例を知らない。

そして、これらのコンテンツは、図書館で借りた場合は見ることができない。なぜなら、図書館の本には基本的に透明なブックカバーが着いているからだ。電子書籍でどうなっているかは知らないけど、早川書房のkindle書籍に解説が収録されていないことに稲葉振一郎がブチ切れていた件とかを考えると、見ることができないということもありうるかなーと思う。

 

そしてそこに、図書館ユーザーや電子書籍ユーザーに紙の本を買わせるヒントがある。カバー裏あるいはカバー下に、コンテンツを載せちゃえばいいのだ。

それはたとえば、野崎や時雨沢のようにカバー裏に小説を載せるのでもいいし、入間のようにカバー裏にイラストを載せるのでもいい。カバー下の表紙を凝った作りにするのもアリ(こういうことをしている例もちょっと見たことがないけれども)。

もちろんこんなことをしたところで出版社の利益があがるとは思えないような気もする。が、その一方で、紙の本の物体的な性質には比較優位優位性がある、ということはほぼ確実にいえると思う。そしてそこに、紙の本が電子書籍と明確に差別化を図って、電子書籍がより普及する未来においても紙の本が生き延びる未知道があるかもしれない。

 

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 (電撃文庫)
 

 

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))