「萌えられる異形」を描けるのはえらい/弐瓶勉『シドニアの騎士(1~15)』

 

 全体的にはいまいち。戦闘シーンがかなりわかりづらく、長々としたセリフをいちいち追いかけながら何が起こっているのかを文字で(!)把握しなければいけないので、かなーりテンポが悪い(ぼくは面倒になったので途中から流し読みした)。設定やストーリーも、驚きでひっくり返ってしまうようなレベルではない。

一応ちゃんと言っておくと、設定もストーリーも、「そこそこ」よくできたものではある。でも「そこそこ」でしかない。だから小説でもマンガでも映画でもゲームでも、これより面白い話自体はいくらでもあると思う。

ただし、真ヒロイン白羽衣つむぎのキャラクター造形だけはずば抜けてすばらしい。どう見ても男性器にしか見えないグロい造形のくせにいちいち可愛らしく感じてしまうというだけでもすごいと思う。この「萌えられる異形」を描くことができることを活かして、いっそフェチ全開で谷風長道ハーレムの半分くらいを気持ち悪い異形キャラにしてくれたら、もうちょっと見どころのあるマンガになったとは思うんだけど……。