クオリティは並だけどめっちゃ笑える/白石晃士「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!劇場版・序章【真説・四谷怪談 お岩の呪い】」

 

 単純な作品の出来という意味では、「コワすぎ!」シリーズの中では平凡な部類に入ると思う。「人喰い河童伝説」のようなド直球さも、「真相!トイレの花子さん」のようなめちゃめちゃな面白さもなく、良く言えば無難、悪くいえば冒険していない感じがある。もちろん「コワすぎ!」シリーズのノリ自体は健在なのだけれど……。

しかしこの作品のいいところは、なぜか笑っちゃうような「シリアスな笑い」がたくさんあること(いや「シリアスな笑い」はこれまでにもあったのだけど、「真説・四谷怪談 お岩の呪い」ではその傾向が顕著なように思う)。たとえば工藤(大迫茂生)がいきなりピッキングをはじめるだとか、浄霊師の道玄(宇賀神明宏)を工藤がぶん殴るだとか、なぜかいちいち面白い。なので、「コワすぎ!」シリーズの中で一番声を上げて笑った回数が多かった。白石晃士がこれらの面白さを狙ってやっているのかどうかはよくわからないが、とにかく笑っちゃうんだからしかたない。

あと、今までの作品と違って、フィクション性を主題にしているのも興味深い。他の「コワすぎ!」シリーズでは一貫して、現実に由来のあるもの(か、由来の不明なもの)が怪奇として登場したのだけど、今回の場合は、お岩さんが全くの想像の産物であることが語られる。どこがどうつながってるのかはよくわからないけど、なんにせよちょっと気になる。

 

どうでもいいんだけど、霊界のシーンのCGのクオリティ明らかに向上してません? やはり劇場版序章ということで、予算がいっぱいあったの……?