村田沙耶香の集大成兼寄せ集め/村田沙耶香『地球星人』

地球星人

地球星人

 

ある意味でこの小説は、村田沙耶香の小説の集大成といえるだろう。この小説には、過去に村田が書いてきたテーマがふんだんに詰め込まれている。小説前半の、主人公と由宇との関係は、デビューから『しろいろの街の、その骨の体温の』のころまでの作風を思わせるし、後半のいびつな共同生活を読んでると「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」、そして皆さんご存知『コンビニ人間』なんかを思い出す。村田ファンにとっては、「ここ、あの小説と同じだ!」といったような発見に満ち溢れた小説といえるだろう。

 そして、この小説はそれだけかもしれない。読み進めていて、過去の小説とのつながりを見出すことの楽しさはあっても、それはこの小説自体の良さを意味するわけではない。ぼくはこの小説を村田沙耶香の集大成といったけど、それは「寄せ集め」と表裏一体なんだと思う。ぼくは村田沙耶香の大ファンだからそれでも楽しめるけど、そうでない人にとっては……。

もちろん、さすがに村田沙耶香なので、それでもそれなりに読めるものになってしまい、読み進めるのが苦痛というわけではない。また、「地球星人」「人間工場」といった造語の数々には、未だ衰えぬ村田のシニカルなセンスを感じることができる。

でも、ファンアイテムかなあ。少なくとも、村田沙耶香の本をあんまり読んだことのない人が読む本ではない。

 

殺人出産 (講談社文庫)

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コンビニ人間 (文春文庫 む 16-1)

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