2018年に読んだ、印象に残った本およびその印象のまとめ(小説とノンフィクションをそれぞれ10冊ずつ)。
小説編
今年読んだ小説のベストは舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(上・中・下)』(新潮文庫、2011年)。「愛は世界を変える」という口にするのも恥ずかしいようなポエムの通りに、本当に愛で時空間を捻じ曲げる小説を書いてしまうのだから恐ろしい。文庫本3冊で1500ページぐらいあるけど、そんなこと苦にもならない傑作。
また、今年はSFを重点的に読んだ。その中だと究極の雰囲気小説ともいえる樺山三英『ジャン=ジャックの自意識の場合』(徳間書店、2007年)や、奇妙(?)なSF(?)短編集アヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』(河出文庫、2014年)、なぜか女子高生が女子高生を食べ始める百合SF矢部嵩『〔少女庭国〕』(早川書房、2014年)などが印象的。あと円城塔『プロローグ』(文春文庫、2018年)は、円城の出版業界に対するフラストレーションがこれでもかというくらいに詰め込まれていて面白い。中国SFのアンソロジーケン・リュウ編『折りたたみ北京』(早川書房、2018年)もよかった。
海外文学では、暴力的な世界を徹底的に乾いた文体で書いたアゴタ・クリストフ『悪童日記』(ハヤカワepi文庫、2001年)が印象に残った。ミステリーでは早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』(新潮文庫nex、2018年)はAIをミステリーに上手に組み込んでいて見事。ライトノベルでは、大変気合の入ったSFラノベオキシタケヒコ『筺底のエルピス(1~5)』(ガガガ文庫、2014~2017年)と、青春群像劇ラノベの一つの到達点大澤めぐみ『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』(角川スニーカー文庫、2017年)が良かった。
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ノンフィクション編
ノンフィクションでの今年のベストはティム・スペクター『ダイエットの科学』(白揚社、2017年)。単純に食生活を科学的に扱った本としてとてもいい本であるというのもあるが、何よりこの本を読んだあとでかなり自分の食生活が変化したことを実感しているので、そういう意味でもぼくの人生をけっこう大きく変えてくれた本だと思う。
人文科学では、ピエール・バイヤール『アクロイドを殺したのはだれか』(筑摩書房、2001年)は、『アクロイド殺し』を徹底的に読解したらそのままオカルトじみた領域に到達しちゃった変な本。岡本裕一朗『フランス現代思想史』(中公新書、2015年)は、さまざまな理由で誤解されやすい構造主義系のフランス思想を丁寧に解説した本。
社会科学では、スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー『超ヤバい経済学』(東洋経済新報社、2010年)は前著と同様非常に楽しい本で、その上キティ・ジェノヴィーズ事件を扱った章では感動まで与えてくれる。濱口桂一郎『働く女子の運命』(文春新書、2015年)は、なぜ女性が働きづらいのかを日本の社会構造に求めた本で、フェミニズムが話題になることが多かった今年に読めてよかった。瀧澤弘和『現代経済学』(中公新書、2018年)は、今の経済学を極めて広い立場から見回し、さらにその中での正統派経済学の役割などまで考えるえらい本。
自然科学では、千葉聡『歌うカタツムリ』(岩波科学ライブラリー、2017年)はカタツムリというテーマで進化論の歴史を概括する変わった本。また、人間の意志をどのようにコントロールできるかがテーマのロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー『WILLPOWER 意志力の科学』(インターシフト、2013年)はたいへん役に立つ。
研究書以外の本では、中山清喬、国本大悟『スッキリわかるJava入門 第2版』(インプレス、2014年)はプログラミングの勉強をする際にたいへん助かった。また、村田沙耶香『となりの脳世界』(朝日新聞出版、2018年)は、ぼくの大好きな村田沙耶香の脳内をちょっとだけ見せてくれるエッセイ集だった。
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