ゼロ年代キャラクター小説の絞り汁/名倉編『異セカイ系』

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 まあゼロ年代キャラクター小説の絞り汁みたいな小説で、ちょっとその味の濃さにびっくりしてしまう感じはあり、「ゼロ年代から出てくるなよ」と言いたくもなってはしまうんですが、ミステリーとしてもSFとしてもキャラクター小説としてもよくできてるんだからしょうがない。問題意識がかなり極端なので受け入れがたい読者はたくさんいるとは思うんですが、それでもゼロ年代のフィクションをそこそこ楽しんだオタクとしては、ああ心地いいなと思ってしまいます。

ただ唯一ケチつけたいのは関西弁の口語体。方言、改行のない「」の畳み掛け、フォントいじり、小説のテーマ、そして直接の言及があるので、たぶん舞城王太郎を意識しているんだと思うんですが、まあかなり読みにくい。1ページ目からそのノリなので、慣れるまでにだいぶ時間がかかった。

 

セカイ系とは何か (星海社文庫)

セカイ系とは何か (星海社文庫)