レフト3.0は左翼の歴史をどう総括するか/松尾匡『新しい左翼入門』

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

 

この本、「新しい左翼」の入門書なのかと思ってたんですよね。松尾匡ってよく「レフト3.0」っていう言葉を使うし、そのレフト3.0にみんな入門しよーよ、という本なのかなと思っていた。ところがこの本は実は、新しい「左翼の入門書」なんですよね。明治〜現在くらいまでの左翼の歴史を、松尾匡(≒レフト3.0)の視点から解釈していく本となっている。

というわけで、変な本といえば変な本。左翼の運動の歴史を「エリート主義」vs「大衆主義」みたいな観点で切り分けていくんだけど、その問題設定自体がかなり松尾匡独自のものなので、刺激的ではあるがあまり学術性はない。その一方で、山本太郎支持がだいぶ盛り上がってきている今、山本太郎みたいなレフト3.0の視点から左翼の歴史はどのようにまとめられるか、というのは有効な情報だろう。とくに、山本太郎にシンパシーは感じるが、少し前までの左翼に拒否感を感じている人に勧めたい。

欠点としては、まず全体を通して使われている「嘉顕の道」「鉄次の道」という言葉が死ぬほどわかりづらい。これはNHK大河ドラマの「獅子の時代」の登場人物から取られているんだけど、普通に(ぼくがまとめたように)「エリート主義」「大衆主義」とかでよかったと思う。あとは、いわゆる「リベラル」についての記述がほぼないというのもなー。もちろん松尾匡的には「リベラル」は左翼ではなく逆右翼なので、対象外と言い張ることはできますが、一般的にはそうではないので……。