真っ当な社会不適合者と不気味な語り手のハーモニー／今村夏子『むらさきのスカートの女』

むらさきのスカートの女

うおーこれはすごい。存在感のない語り手が忘れたころに現れる不気味さよ。前半～中盤は『コンビニ人間』感もあり、社会不適合者の社会復帰話とストーカー話を無理なく両立させている。終盤は若干失速気味か。

行きたいところに行けることの素晴らしさ／「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド - Switch

ほんとに見えるところ全部行けるので、山を登ったりして世界を広げていくことがとにかく楽しい。戦闘も、まあダクソライクにパリィやら直前回避やらあるので、それなりに緊張感持って遊べる。いいゲームです。

スタニスワフ・レム『虚数』読書メモ

虚数 (文学の冒険シリーズ)

スタニスワフ・レム『虚数』（国書刊行会、1998年）の読書メモ。

ブログが「抜粋」であることに注意／伊藤計劃『伊藤計劃記録（１・２）』

伊藤計劃記録 I (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃記録 Ⅱ (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃が書いた小説以外の文章を集めたもの。いろいろな雑誌などに書いたエッセイと、ブログの文章が収められている。伊藤計劃という作家がどのように作られたかがうっすらとわかるので、伊藤計劃ファンにはおすすめ。

……といいたいんだけど、これ、ブログの文章は「抜粋」なのよねえ。故人のブログなんていつ消えてしまうかもわからないんだから、せっかくなら全部収録してほしい（まあ紙幅の問題もあるから仕方ないような気もするけれども）。それと、抜粋であるのなら裏表紙に「全記録」とか書くのはやめてほしいなあ。

ちなみに、伊藤計劃のブログはここ。こういう本を読むぐらい伊藤計劃の熱心なファンなら、ブログ部分は抜粋じゃなくて元を読んだほうがいいのでは。

読んだ本（2020/7）

7月に読んだ本のまとめ。

本編よりはだいぶいつもの黒沢清っぽい／黒沢清「予兆 散歩する侵略者」

予兆 散歩する侵略者 劇場版 [DVD]

本編「散歩する侵略者」だとだいぶはっちゃけていた黒沢清だが、こちらではだいぶいつもの黒沢清っぽかった。どっちが好みかは人それぞれ。ぼくは、「CURE」レベルでドギツいことやらないんだったら、本編「散歩する侵略者」のほうが好きかなあ（たぶんかなり少数派だと思う）。

デイケア参加者の悪戦苦闘っぷりをいきいきと描いた傑作エッセイ／東畑開人『居るのはつらいよ』

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

いやーベタに感動してしまった。一応、主にデイケアに主眼をおいた医療エッセイではあるんだけど、デイケアに携わる人々の描写（ある種民俗学的な？）が圧倒的にうまい。デイケアのスタッフやメンバー（参加者のこと）の、人生にうまくいかない中で悪戦苦闘する様子が、プラスの意味でもマイナスの意味でもいきいきと描かれており、ものすごく感情移入してしまった。傑作です。頻繁にギャグがスベってるのはご愛嬌。