そんな『おにぎりスタッバー』の大澤めぐみが、久しぶりに帰ってきた。立て板に水ともいうべき饒舌JK文体が作中の要所要所で披露されており、たいへん読み心地がいい。ストーリーは、『おにぎりスタッバー』とは違って小綺麗にまとまっており、ベタではあるが読む人を選ばないと思う。
続きを読むたいへんしんどいADHDアイドルオタク小説/宇佐見りん『推し、燃ゆ』
そんな彼女の救いとなっているのは「推し」の存在だ。もちろん、アイドルに癒やされたりとかいった部分もあるのだろうけど、それより重要そうなのは、アイドルを推す中で得たネット上の人間関係だ。どうも彼女はそのクラスタの中ではそこそこ有名なようで、ブログだとかSNSだとかでオタ活を通じてコミュニケーションをとっている。「推しは背骨だ」という印象的なフレーズは、彼女が精神的にアイドルに支えられているというだけでなく、彼女の数少ない他人とのコミュニケーションの基盤になっているということでもある。
だからこそ、「推し」がアイドルをやめることは彼女を孤独にする。それに示し合わせたかのように、彼女は学校を退学し、実家を追い出され、バイトをクビになる。高校生から家族と学校とバイトとネットを取り上げたら、そりゃあほぼ完全な孤独になるだろう。ぼくは小説を読んでいるときにあまり感情移入をしない方だと思うんだけど、これに関してはかなり感情移入してしまい、かなり暗い気分になってしまった。
というわけで、よい小説です。今どきののアイドルオタクの生態を描いた風俗小説という側面もあるんだけど、それがわりとうまくADHD小説に貢献している。ただし『コンビニ人間』などとは違い、かなり救いのない小説なので、精神衛生には気をつけること。
続きを読む恐竜を飼うことに重点を置いたクラフトゲー/「ARK: Survival Evolved」
いいからとっとと金よこせ!/松尾匡『左翼の逆襲』
後半の方は、マルクスの再解釈による反緊縮の思想的裏付けみたいな話だが、正直反緊縮を裏付けているとは思えず、どちらかというと「御託はいいからとっとと金よこせ!」という思いが出てきてしまった。反緊縮は単なる経済政策なんじゃなくて新しい社会制度の構築云々という話が出てくるんだけど、まさにそういうお題目こそ、松尾がこの本の前半で批判してたレフト2.0のやっていたことなんじゃないかなー。さらにいうと、『この経済政策が民主主義を救う』以降の松尾の本では反緊縮の思想みたいな話はあまり出てこなかったところもあり、後付の理屈に見えてしまう。
続きを読む読んだマンガ(2021/3)
3月に読んだマンガのまとめ。
続きを読む読んだ本(2021/3)
3月に読んだ本のまとめ。
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