露天風呂オンリーの快適な共同浴場/白骨温泉 煤香庵

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白骨温泉中心街にある、露天風呂オンリーのこじんまりとした共同浴場。しっかり加熱しているのか、だいぶ寒い時期でも程よく熱く、快適に入浴できた。崖に面しているため、外の景色もまあまあ。洗い場も屋外のため体を洗うとものすごく寒いのだけはつらい。

気軽に楽しめる秘境温泉旅館/白骨温泉 かつらの湯 丸永旅館

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炭酸カルシウムによるきれいな白濁の温泉が特徴的。メインの浴場はそこまで広くはないが、そもそも旅館自体やや小さめなので、あまり問題にはならなかった。また、無料で使える貸切風呂は、床一面が湯の花びっしりとなっていて圧巻。

露天風呂は微妙だった。白骨温泉は全体的にややぬるめの温泉らしいが、それをそのまま露天風呂にしてかなり寒い(ただしこれは季節にもよるかもしれなくて、夏に行くとまた違った印象になるかも)。あと露天風呂が1階で道路に近い(外からは見えないが)ので、夕方くらいまでは車などの音がモロに聞こえるのもマイナスポイント。

立地的には、まあまあ山奥の白骨温泉の、さらに中心街から外れたところにあるので、だいぶ秘境感が高い。とはいえ、すぐ近くにバス停があるのでだいぶお手軽な秘境だと思う。夜外に出ると、聞こえる音は流れる湯の音だけという感じになってだいぶ神秘的。もちろんコンビニみたいな便利なものはまったくないので、必要なものがある場合は準備をしっかりすること。

選民思想は大阪風ユーモアで誤魔化せる/小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』

大量の蔵書を置いておくと、2冊の本から新しい本が生まれるというファンタジー。題材上どうしてもペダンティックさや読書家的な選民思想色があらわれてしまうというのは避けられず、豊崎由美の失言などを見た後だと手放しでは褒められない。ただその一方で、軽妙な話運びやマジックリアリズム風の想像力、そして小田の出身でもある大阪的なユーモアセンスがあるため、そういう嫌な感じのの大部分を誤魔化すことができているとも思う。こんな題材でもあまり嫌味がないのは、ひとえに小田の作家としての実力に寄るところが大きいだろう。

本格的で独創的な生物学SFを書き続けた石黒達昌の傑作選/石黒達昌『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』

伴名練が編集した、石黒達昌の傑作選。本人がファンブログを運営するほどのファンでもあるためか、セレクトには概ね納得がいく。強いていえば個人的には、蜂につきまとわれた男を石黒っぽい文体で書いたらなぜか不条理コメディっぽくなった「カミラ蜂との七十三日」はほしかったとは思うが、他の作品とのテイストの違いを考えるとなくてもよかったかも。

再読した作品では「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに」と「希望ホヤ」が圧倒的に良い。どちらも生物学SFであると同時に、喪失の悲しみに満ち溢れたドラマでもある。「雪女」も似たようなテーマではあるが、雪女という魅惑的なモチーフがあるためそこそこ面白い。あと、「王様はどのようにして不幸になっていったのか?」は伴名練は寓話的だと解説しているが、なんかこれブラックホールあるいは時間SFっぽい記述ない? なんか変な読み方できるのかも。あまり1本筋の通った解釈は見つけられなかったが……。

初読作品だと、「ALICE」が強烈な印象を残す怪作。伴名練が解説するように人格とアイデンティティみたいな話も良いが、俗っぽいスプラッターホラー色があるのが他の石黒作品との違いで、そこにインスタントな面白さがある。

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古栗の意外なアクティブさが垣間見える/木下古栗「木下古栗のカルチャー×食」

木下古栗が『UOMO』という男性向けファッション雑誌に連載していたエッセイ。「カルチャー」といわれるとぼくみたいな文化系はすぐ小説とかマンガとか映画とかを思い浮かべるけど、古栗がこの連載で扱う「カルチャー」はずっと幅広く、スカイダイビングだのドローンだのVRドラゴンボールだのサッカーだの、ちょっとぼくみたいな人間には縁がなさそうな「カルチャー」が紹介されている。典型的な小説家のイメージにはあまり当てはまらない、古栗の意外なアクティブさが垣間見えるので意外性はある。

そうかと思うとたまーーーーーーーに小説家らしい話も出てきている。たとえば2019年10月号では、文芸誌編集者から冷遇を受けた体験について触れている。また、2020年12月号では小説の推敲についての尋常じゃないこだわりについて解説していたりする。なので、ファンなら一読の価値は……なくもないかな。

ちなみに「食」については、毎回カルチャー側に寄せる努力はしているものの、とくにめざましいシナジーが生まれたりはしていない。

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トヨザキ社長、ぼくの書評が杜撰じゃなくてTikTokerけんごの小説紹介が杜撰だとは思えないんですけど

togetter.com
書評家の豊崎由美が、小説紹介をするTikTokerけんごのことを批判して炎上している。けんごのことはぼくは噂でしか知らなかったので、あらためてちょろっと見てみたのだけれども、まあ確かに本の紹介としてはわりと適当な部類だとは思うが、でも別に本の紹介が適当だったとしても、誤読とか差別発言とかがなければ大した問題もないし、本が売れるのは素晴らしいことだと思う(ぼく自身は特に参考にすることはないと思うが……)。

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