フード左翼の分析と批判が的確/速水健朗『フード左翼とフード右翼』

食を巡る価値観の対立を「フード左翼」「フード右翼」という直感的にわかりやすい造語で説明するのはすばらしいし、フード左翼の分析と批判も的確。その一方で、フード右翼についてまともな考察がほとんどないのは片手落ちかなあと。また、食の思想と政治思想の接続もうまくいっていない。

これぐらいの穏当な無神論であればガンガン推し進めちゃったほうが世界のためなのでは/リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』

まあいろいろと宗教絡みで問題が発生しているので手始めにドーキンスを。無神論と、それをサポートするための科学(主に進化論)の入門書。これぐらいの穏当な無神論であればガンガン推し進めちゃったほうが世界のためなのでは、とも思ってしまった。ぼくはドーキンスがなぜか苦手なので、進化論に関する記述はちょっとしっくりこなかったが、無神論や物理学の話はけっこうおもしろかった。ウンチクもたっぷり。今度『神は妄想である』も読まなきゃなあ。

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パラパラ流し読みしてもまあまあ面白い/東畑開人『心はどこに消えた?』

ちょっと長めの序文は本当にすばらしく、ここ20年ぐらいの平成不況が原因で心の問題よりも社会の問題のほうがずっと大きくなってきてしまったという話はとても説得力ある。でも、その後に続く本文はそんな序文とあまり対応しておらず、ただのカウンセリングエッセイという感じ。まあ東畑はエッセイの名手なので、単にパラパラ流し読みしてもまあまあ面白いというのはあるけれども。

斎藤らしい着目点/斎藤美奈子『文庫解説ワンダーランド』

文庫解説に着目した滅多斬り系の本。読む前は「文庫解説ごときに注目してもどうにもならんでしょ」と思っていたが読んでみたらこれが面白い。特に著作権が切れているような古典的小説の解説比較なんかはこれでひとつの文芸評論という感じになっていて素晴らしかった。着目点がとても斎藤美奈子らしいです。

女性であることが活かされているか?/奥浩哉、イイヅカケイタ『GANTZ:G』

うーん登場キャラクターの多くが女性であることが活かされているわけではないかな。大半が先輩兄ちゃんの言いなりだったし。『GANTZ』本編でも、数は少ないとはいえ女性でバリバリに戦うキャラもいたわけで。

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「読んだ本」「読んだマンガ」の定期更新を停止します

いつもブログをお読みいただき、誠にありがとうございます。私生活が忙しくなりそうなため、毎月の初めに投稿していた「読んだ本」「読んだマンガ」の更新を停止します。申し訳ございません。

なお、今まで「読んだ本」「読んだマンガ」で多少長めに書いていた感想は、書評としてブログに投稿しますので、ブログの更新頻度自体は増えるかと思います。

ニール・ゲイマン「本の裏表紙に載っている生命体が細菌である可能性」 in 2010年イグノーベル賞の24/7レクチャー

improbable.com

講師: ニール・ゲイマン(作家、ヒューゴー賞ネビュラ賞カーネギー賞の受賞者)


24秒で*1:本の裏表紙に載っている生命体が作家なのか細菌なのか不確かなときは、人類の人口を60億人として、そのうち半分以下が出版経験のある作家だと仮定すると、最大で30億人の作家がいるということになる。この地球には、約500穣の細菌がいる。つまり、無作為に選んだ本の裏表紙に載っている生命体が細菌であり作家でない可能性は、そうでない可能性の大体30垓倍*2だ。


7単語で:恐らく細菌で、作家ではない*3

*1: 訳注:イグノーベル賞内で行われる24/7レクチャーでは、講師がまずあるトピックについての説明を24秒で行い、その後その要約を7単語で行う。

*2: 訳注:500穣÷30億は約17垓となるはず。本当に大体の計算なのだろう。

*3: 訳注:原文では “It’s probably a bacterium, not a writer” となっており、7単語。

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