面白かった本(2016/10)

10月読んで面白かった本のまとめ。

 

小西甚一『日本文学史』(講談社学術文庫
日本文学史 (講談社学術文庫)

日本文学史 (講談社学術文庫)

 

 単純な二分法は苦しいところもあるし、あら探しすれば実証としておかしいところもなくはないと思うが、それにしても異様な説得力。政治経済外交その他諸々の知識を縦横無尽に使った傑作。ついでに学校の授業の平板な文学史とは違った生々しい評価つき文学史としてもいい。

個人的には、江戸初期は経済的に豊かだったので上方で質の高い文学が育ったが、中期に経済が落ち込むと文学なんかやってられなくなって大衆向けの俗っぽい文学が増えそれが弾圧された、というくだりが目から鱗

 

 中山元フーコー入門』(ちくま新書
フーコー入門 (ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)

 

 おべんきょうに。ウィンドシャトル「歴史家としてのフーコー」あたりと併読すると面白いかも。

 

 清水亮『教養としてのプログラミング講座』(中公新書ラクレ
教養としてのプログラミング講座 (中公新書ラクレ)
 

 プログラミングの思想とかGUIとか。詳細はここ

 

 鈴木哲也、高瀬桃子『学術書を書く』(京都大学学術出版会)
学術書を書く

学術書を書く

 

 著者の紙の本と電子書籍に対する考え方には賛同できないし、そもそもこの本のレイアウトもそこまで褒められたものかと言われると微妙だったり、学術出版社の編集者という立場からのわがままに近い部分があったりと、欠点はそこそこ。でも、そういうのを除けばこの本で主張されていることは基本正しいことだと思う。あと、工夫されたレイアウトなどを事例としてたくさん紹介しているので、ちょっとした悩みを解決するのに便利。

 

ガリレイ星界の報告 他一編』(岩波文庫
星界の報告 他一編 (岩波文庫)

星界の報告 他一編 (岩波文庫)

 

 ぼくは基本的に古典嫌いなのでこういう本はあんまり好きじゃないんだけど、これはちょっとおもしろかった。なにがおもしろいって、観測からちょっとずつ非アリストテレス的宇宙像に近づいていくかと思ったらいきなりエーテルがどうとかいいだすところ。このヘタレ感というかなんというか、そういうのがたまらなく可愛らしい。ガリレオが宗教裁判でどうたらこうたらみたいな感じで偉そうに科学を語る人に読ませたい。

 

 ディック『人間以前 ディック短篇傑作選』(ハヤカワ文庫SF)

 玉石混交。ワンアイデアにとどまってる作品(「不法侵入者」)とか、彼の偏狭な女性観がSF設定とあいまってサイアクなものになったり(表題作)とかもある。でも、「欠陥ビーバー」のパラノイアっぷりとか、「地図にない街」や「新世代」のエモさとかはさすが。

 

バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』(ちくま学芸文庫
読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

 

 ド嬢アニメ化なのでタイムリー。ここ

 

寺尾隆吉『ラテンアメリカ文学入門』(中公新書

 待望の、質の高くお手軽なラテンアメリカ文学入門書。ここ

 

佐藤雅昭『なぜあなたは論文が書けないのか?』(メディカルレビュー社)
なぜあなたは論文が書けないのか?

なぜあなたは論文が書けないのか?

 

 論文を書く際に非常に便利そうな本。心構えから実践までしっかりとカバーしているので実用的。著者は医学の研究を主に念頭に置いているけど、別に文系でも有効活用できると思う。

ちなみに、同著者による姉妹本『なぜあなたの研究は進まないのか?』もあるけど、スピリチュアルな話も結構あるので正直微妙。「寝ろ!!!」みたいな身も蓋もない話はまあ面白いし、読んで損するようなことはないと思うけどね。