日常系ミステリーの完成形/石黒正数『それでも町は廻っている(1~16)』

 

 これはすごい。話ひとつひとつはそこまで大したこともないんだけど、積み重ねの量が膨大で、しかも時系列シャッフルをこれでもかというくらい駆使して魅力的なエピソードを作り上げている。キャラクターの可愛さも独特で、絶妙な芋臭さがたまらない。

 三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』というあまりおもしろくない日常系ミステリーが流行ってから、この手の日常系ミステリーはものすごく流行ったイメージがある(これは偏見?)。ただぼくは、ちっちゃなエピソードを積み重ねる日常系ミステリーの手法が、根本的に小説と相性が悪いと思っている(米澤穂信『いまさら翼といわれても』の感想でも書いたように)。ということで、日常系ミステリーはこういうふうに月刊連載とかでやるといいんじゃないんでしょうか。『名探偵コナン』とかもありますし(これは週刊連載だけど)。