化けの皮まで爆破しないでもいいのに/中島哲也「告白」

 

告白

告白

 

 情報の提示の仕方がかなり上手で、驚きが最大限に産まれるように、情報を観客に伝えるタイミングを上手く調整している。なので、裏切りこそが物語の楽しさだと思っている人にとってはとても楽しめる映画なのではないか。

でも、いくら構成が優れていても、中身がなければダメなのだ。「驚きが最大限に産まれるように」と書いたけど、中身がショボいので、最大限にしても「ああそうなの」程度にしかならない。特に細かいご都合主義が随所で見え隠れしており(森口の恋人が都合よくHIVであるだとか、渡辺(西井幸人)が命の大切さを語る作文コンクールで代表に選ばれたりだとか)、演技や構成で惹きつけられてもすぐに現実に戻されてしまう悲しさ。

で、そういうショボい中身をなんとか取り繕うと、演出にもかなり力を入れているんだけど空回り。とくにひどいのがラストの爆破の逆再生シーンで、化けの皮もろとも爆破してしまう。あそこで一気に冷めた人も多いのでは。

 

ただまあ、役者が結構魅力的なので見れてしまうといえば見れてしまう。開始から30分の延々と続く森口(松たか子)の語りはとてもよい。この冒頭30分は、松たか子の語りで観客を惹きつけつつ必要な情報を詰め込んでるという意味でも完成度が高い。ウェルテル(岡田将生)のダメ教師っぷりも、絶妙な容姿と演技で見事に表現されているし、北村(橋本愛)もめちゃかわいい。

なんかいろいろと惜しい映画な分、余計に残念なような……。