社会人にとっては馴染みの薄い大学図書館の、手際の良い紹介/斉藤道子『首都圏 大学図書館ガイド』

首都圏 大学図書館ガイド オトナの知的空間案内

首都圏 大学図書館ガイド オトナの知的空間案内

 

 ぼくは一般的な人に比べると本を買うのにかける金額はかなり多いと思うんだけど、それでもウン千円もする本をポンポン買うほどの裕福さや熱意はない。しかし、そんな本の中にも、どうしても読みたい本は存在するだろう。しかし、そういった本の需要は少なく、なかなか普通の区立図書館には入っていないことも多い。

そういうときに役立つのがこの本だ。この本では、首都圏にある、一般人でも利用できる大学図書館のうちいくつかが紹介されている。副題の「オトナの知的空間案内」というのがまさに言い得て妙で、社会人(というか「非学生」)にとってはなかなか接する機会の少ない大学図書館という空間を、丁寧に案内してくれる。ついでにいうと、こういう本が出版されて大学図書館の一般利用者数が増えれば、それは大学図書館にとってもメリットがあるのでは?(主に予算とか予算とか予算とか……)

また、各図書館の特色を紹介しているのも面白い。ぼくは、大学図書館ごとに独自の試みが行われているということを今まであまり意識したことがなかったので(というか普通は意識しないと思う)、そういうことを発見できたのは収穫だった。

 

欠点としては、まずなによりも複数の県を扱って1冊の本にしているところ。だって普通、大学図書館を利用したいという人も、わざわざ隣の県まで行くことはないだろう。大学図書館ごとの特色の紹介がより幅広くできるというメリットはあるものの、実用書としてはいまいちだと思った。とはいえ、数県をまとめてついでに値段を高くするとかでもしないと、こんな需要の少なそうな本はそもそも出版できないと思われるので、仕方がないといえば仕方がないが……。

あと個人的には、地図が欲しかったところ。自分の住んでいる地域と大学図書館の位置関係を地図で確認できるだけでも、随分使い勝手は違うだろう。