両手に舞城王太郎を吸い込んでできあがった異形のマンガ/大暮維人、舞城王太郎『バイオーグ・トリニティ(1~14)』

 まさに「舞城王太郎のコミカライズ」。愛は祈りだだの世界は密室でできているだの、舞城の小説を想起させる言葉がじゃんじゃん出てくるというのもあり、ファンとしては嬉しい限り。

ただ……残念ながら、うまくまとまっているとは言い難い側面もある。舞城の小説を両手に吸い込んだら、まるでこのマンガにでてきているキャラクターみたいにいびつな話になっちゃった、といった感じ。読んでる分にはわりと楽しいのだけど、読み終わって振り返ってみるとなんだったんだあれ? みたいになっちゃう。

その一方で、キャラクターをはじめとする絵の力はすさまじい。モノを吸い込んだヒトのグロテスクっぷりは、まさに(いい意味で)舞城の小説のコミカライズ。さらに、カジュアルなエロがうまくバランスをとっている感じがはあり、エログロナンセンスのお手本みたいになってる。