意味のある妄想オチってめずらしー/ドゥニ・ヴィルヌーヴ「複製された男」

複製された男 (字幕版)
 

 世の中の大多数の人は妄想オチを嫌っている(はず)。妄想がセーフならなんでもありじゃねえかとか、いろいろな批判方法はあると思うのだけど、それらの根底には共通する意識がある。それは、妄想というパターンが何かを表現するための手段ではなく、目的となってしまっているという問題だろう。

 本作は珍しく、その問題をうまく回避している。ネタバ本作で登場する妄想は、明確な手段として存分に活かされている。これくらいうまくできた妄想って『ぼくは麻理のなか』ぐらいしかぼくは挙げられない。

 

複製された男 (ポルトガル文学叢書)

複製された男 (ポルトガル文学叢書)