粒ぞろいの中国SFアンソロジー/ケン・リュウ編『折りたたみ北京』

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

 

 中国SFって噂には聞くんだけどまったく翻訳がされない分野なので、こういう本が出ること自体がけっこうありがたい。ただ、比較的若手の作家の短編を集めたアンソロジーということなので、粒ぞろいではあるがきれいにまとまった小品ばかり、という問題もある。あと、編者や訳者たちがこれらの小説の普遍性をやたらと主張するのは、言い訳がましさを強く感じる。

そんな中でぶっちぎりに良かったのが劉慈欣「円」。「スケールのデカさ」も中国っぽさの1つだというのを完全に見落としてたので、意外さと納得感を同時に味わえた。『三体』の一部を切り出して短編化したものということで、本編への期待も高まるばかり。夏笳「童童の夏」も、新しい労働の形を見せてくれる、比較的後味の良いラストでわりと好き。

 

 おまけ。このアンソロジー女性作家多くない??? 夏笳、郝景芳、糖匪、程婧波の4人が女性で、なんと過半数。うむむむむむ。日本の女性若手SF作家って高山羽根子くらいしか思いつかないんだけど。いちおう可能性としては、彼女らは日本でいうところの村田沙耶香とか藤野可織とか最果タヒみたいな立ち位置の人ということはあるかもしれないけど……。