読んだ本(2019/10)

10月に読んだ本のまとめ。

 

 

村田沙耶香『ハコブネ』(集英社文庫、2016年)
ハコブネ (集英社文庫)

ハコブネ (集英社文庫)

 

 よかった。セックス・ジェンダーの話に集中してくれているので、他の村田作品よりもイタさがかなり薄い。

 
米澤穂信『犬はどこだ』(創元推理文庫、2008年)
犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

 

 米澤穂信だからまた日常の謎と思いきや。鮮やかです。突き放すようなラストが印象的。

 
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』(平凡社ライブラリー、2005年)
エル・アレフ (平凡社ライブラリー)

エル・アレフ (平凡社ライブラリー)

 

 『伝奇集』と比べても、良くも悪くもおとなしめ。そんな中で一番最初の短編「不死の人」だけはぶっ飛んでてよかった。

 
宮部みゆきほか『NOVA+ バベル』(河出文庫、2014年)

 大森望編集の書き下ろしSFアンソロジー。わりとヘンなSF揃いの印象。宮部みゆき「戦闘員」、長谷敏司「バベル」、円城塔「Φ」あたりが良かった。

 
マイケル・ルイスマネー・ボール〔完全版〕』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2013年)

 データ分析でアメリカ野球に革命を起こす話。詳細はここ

 
早坂吝『犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー』(新潮文庫nex、2019年)
犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー -探偵AI 2- (新潮文庫nex)

犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー -探偵AI 2- (新潮文庫nex)

 

 AI韓国原発ロッコ問題イルカ保護などなどいろいろな話題を詰め込んでいるんだが、小説としてあんまりうまくまとまってない。まあ推理小説としてはちゃんとまとまっているので、それだけでも大したものだとは思うが。

 
ニコライ・ゴーゴリ『外套・鼻』(岩波文庫、2006年)
外套・鼻 (岩波文庫)

外套・鼻 (岩波文庫)

 

 ひっさびさに読んだけど面白い。特に「外套」は昔は良さがあんまりわからなかったんだけど、仕事している今読むとめちゃめちゃ感情移入できる。

 
恒川光太郎『夜市』(角川ホラー文庫、2008年)
夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

 良くも悪くも堅実。詳細はここ

 
グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』(ハヤカワ文庫SF、2019年)
ビット・プレイヤー (ハヤカワ文庫SF)

ビット・プレイヤー (ハヤカワ文庫SF)

 

 やっぱイーガンは、長くて世界設定がややこしければややこしいほど独自性が出てきておもろい気がする。「鰐乗り」がよかった。

 
西田宗千佳『ネットフリックスの時代』(講談社現代新書、2015年)

 流石に4年前の本なので、ある程度動画配信サイトを使っていれば目新しい情報はないかなあ。それでも今年でた『NETFLIX』よりは包括的に情報がまとまっている。

 
稲葉振一郎銀河帝国は必要か?』(ちくまプリマー新書、2019年)
銀河帝国は必要か? (ちくまプリマー新書)
 

 いやーこれをちくまプリマー新書で出すのは狂ってる。ドナルド・デイヴィッドソン削ってアシモフ加えたからって中高生はこんなの読めねーから! まあ地に足のついた驚きを味わえる本ではあると思う。ただし『宇宙倫理学入門』と被っている部分も多い。

 
小林泰三『脳髄工場』(角川ホラー文庫、2006年)
脳髄工場 (角川ホラー文庫)

脳髄工場 (角川ホラー文庫)

 

 「酔歩する男」みたいに異様に気合の入ったSF短編を求めていたんだが、ショートショートっぽいやつや手癖で書いたような短編が多くて残念。「脳髄工場」「C市」あたりが比較的おもしろいかなあ。

 
大竹文雄行動経済学の使い方』(岩波新書、2019年)
行動経済学の使い方 (岩波新書 新赤版 1795)

行動経済学の使い方 (岩波新書 新赤版 1795)

 

 日常生活から政策まで、行動経済学をどのように使うことができるのかを解説した本。よくナッジナッジというけれど、入門書しか読んでないせいか「どのように」ナッジするのかまで詳しく説明されているのを見たことがなかったので、さまざまなナッジの比較検討が紹介されていたのはけっこう参考になった。著者の専門の、医療現場における行動経済学の解説もおもしろい。

……ただ(だからこそ)、やや唐突に挟まれる消費税増税擁護論にはびっくりしてしまった。金持ちも食べ物はいっぱい買うから軽減税率で金持ちの払う税が減る、だから軽減税率はダメっていってるけど、その論理だと消費税率下げれば下げるほど金持ちが払う税の金額が減るからよくないってことになっちゃわない??(ただこれ著者だけじゃなくて他の経済学者もけっこういってるっぽいのよねー……) しかもその部分については、行動経済学の知見すらあまり活かされてないように見える。