先制パンチ喰らって頭がぐらぐらする短編集/村田沙耶香『生命式』

生命式

生命式

 

 村田沙耶香の本領発揮といった感じの短編集。まあアイデア一発勝負というか出オチ感はあるんだが、それでもちゃーんと印象に残るあたり、村田の地力の高さが伺える。全体的にコンパクトにまとまっているのもぼく好み。

特に面白かったのはやはり表題作の「生命式」で、もったいないから死体を食べるというぶっとんだ設定と、セックスだとか妊娠だとか常識の恣意性だとか村田沙耶香お得意のテーマがうまく融合している。その他は、やたら小ネタの多い「素敵な素材」、よくあるモノフェチ小説かと思ったら意外なところに着地する「かぜのこいびと」、ペルソナの目まぐるしい使い分けの書き方がクセになる「孵化」がおもしろかった。