- 作者:木下古栗
- 発売日: 2020/08/26
- メディア: 単行本
ただそうなったときに気になるのは「オナニーサンダーバード藤沢」か。この小説は村上春樹のパロディ(らしい。ぼくは春樹の小説をほとんど読んだことがないのでわからないが確かにそれっぽいような)のため、「その後の展開」でも地の文は一応普通の文章となっている。なんとなく「その後の展開」の文章のほうが雑な文章のような気はするけれども、明らかな差ではないように思う。「人間が書くのとは逆に、特に一人称小説の生成が難しいらしい。というのもAIには内面や主観性が理解できないせいか、一人称でも三人称のように、他人事のように語ってしまいがちだとかで」(p.149)と予防線を張るのであれば、もうちょっと差を明確にしてほしかったかも。
「酷暑不刊行会」はちょっと文学と下ネタダジャレゴリ押しという感じがして、全体的にはあまり感心しない。ただ、真面目パートと下ネタパートの行ったり来たりは、今までの古栗にはなかった感じでわりと新鮮。あと、古栗の下ネタ小説についてのメタ小説っぽくも読めるのかなーとは思った。