「誰でもわかる」文学理論/小林真大『文学のトリセツ』

文学のトリセツ ー「桃太郎」で文学がわかる!

文学のトリセツ ー「桃太郎」で文学がわかる!

  • 作者:小林真大
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
文学理論は、文学に興味のある人にのみ必要なものと思われがちである。しかし実際のところ、文学理論的なものの見方は、あらゆるテクストに対して適用可能なものであり、わりと汎用性の高い「便利」なものである。

ではなぜ、文学理論は文学に興味のある人にのみ必要なものと思われがちなのか? その原因の一部は、文学理論を解説する側にもあると思う。普通、文学者サマが文学理論を解説する場合、古典や名作文学を題材にする。でも、「普通の人」は古典や名作文学になんてまず興味ない。そこに、文学理論と「普通の人」との間のギャップがあるのだ。


本書は、そのギャップを埋める、画期的な文学理論の解説書だ。本書は、すべての文学理論を、ほぼすべての日本人が知っている「桃太郎」に適用している。そのため、実際の適用例を見る上でのハードルが低い。また、文学批評の対象を固定することで、それぞれの手法の違いがわかりやすいという点だ(ただし、対象を固定するという手法は廣野由美子『批評理論入門』でも取られている)。

このような画期的な解説書を書けたのは、著者がインターナショナルスクールの教師であることも大きいだろう。文学部の大学生だけを相手にしていればいい文学研究者と違って、さまざまな趣味嗜好を持っている学生と接しているからこそ、文学に興味のない人にも文学批評を解説しようという発想が生まれるんだと思う。