病気の複雑さを、「複雑なままわかりやすく」伝える本/市原真『どこからが病気なの?』

病気の複雑さを、「複雑なままわかりやすく」伝えるという面白い本。病気は複雑なものだという視点から、そこから現実的な病気との付き合い方を探るという試みは、知的におもしろいと同時に、実用的でもある。正しいが面白くない医学的な正論とも、知的遊戯としての価値はあるが病人には役に立たない哲学的な思索とも異なる。

また、医者の視点を患者に伝えるという部分もうまくできている。医者が患者の病気を特定するプロセスの解説は、医者はぼくたちと同じ生物なのだから、エスパー的に患者の病気を見通すことはできないという当たり前の事実を思い出させてくれる。まあ若干医者の肩を持っている感はなくもないが、著者も医者なのでそこはしょうがない。