中島敦って実はめちゃくちゃ頭でっかちインテリ嫌いだったのでは?/中島敦「かめれおん日記」

中島敦 (ちくま日本文学 12)

中島敦 (ちくま日本文学 12)

  • 作者:中島 敦
  • 発売日: 2008/03/10
  • メディア: 文庫
佐野幹『「山月記」はなぜ国民教材となったのか』では、中島敦山月記」は頭でっかちなインテリを批判するような教育的な意図があり、それが教科書に採択され続けてきた側面があると論じられている。そこで前提にされているのは、「山月記」の頭でっかちインテリ批判はせいぜい「ちょっとした内省」程度であり、中島敦がそこまでインテリ嫌いだったのではない、ということだ。

でも「かめれおん日記」を読むと、ちょっとそんなに呑気なことはいってられないかもという感じがしてくる。「かめれおん日記」の大部分を占めているのは、「内省」程度のぬるい言葉ではすまされないレベルの、過激な頭でっかちインテリ嫌悪だ。「かめれおん日記」自体、やや混乱したあまりうまくない小説であるんだけど、それがかえってインテリ嫌悪の気持ちが強いことを強調するようにも思える。そういうことを背景にすると、「山月記」は、そういったインテリ嫌悪的な要素を、極めて上手に話の中に組み入れることに成功した小説なのかなあとも思えてきた。




「山月記」はなぜ国民教材となったのか

「山月記」はなぜ国民教材となったのか

  • 作者:佐野 幹
  • 発売日: 2013/07/31
  • メディア: 単行本