4月に読んだ本のまとめ。
乗代雄介『旅する練習』(講談社、2021年)
ぼくが乗代を読むのは2冊目で、文芸評論家からの評判もかなりいいんだけど、いやー。全然良さがわかんねえ。フェミニズム的に微妙、みたいな難もあるけど、それ以前の問題として。山内マリコ『あのこは貴族』(集英社文庫、2019年)
フェミニズム的にはたいへんいい話。ザ・嫌な男という感じの幸一郎についても、最後の最後でうまいことフォローしており、嫌な気分を減らすこととフェミ的な価値観を両立させていてすごい。ただ、そのいい話成分が小説の後ろ1/3だけで、地味でしんどい前フリが長すぎる感じはしてやや退屈。相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社、2019年)
まあ何をいってもネタバレになるので詳細は書かないが、特殊設定ミステリーがだいぶ人口に膾炙した現代に放り込まれた怪作。一応連作短編っぽい形式ではあるのだけど、短編個々はそこまで面白いわけではないので、前半はちょっとしんどいかも。上野庸平『ルポ アフリカに進出する日本の新宗教』(花伝社、2016年)

- 作者:上野 庸平
- 発売日: 2016/07/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
原田実『江戸しぐさの終焉』(星海社新書、2016年)

- 作者:原田 実
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 新書
坂口安紀『ベネズエラ』(中公選書、2021年)
現在のベネズエラの惨状がよくまとまっている。経済政策に関する緊縮的な考え方はやや不当かなあと思うようなところもあり、正直チャベス政権での経済政策はそこそこうまくいっているように見え、明らかにマドゥロ政権の問題だろという感じはあるが、とはいえ他山の石にはなるだろう。田中拓道『リベラルとは何か』(中公新書、2020年)
リベラル概念を中心に、新自由主義・ポピュリズムなどとの比較を明確にしている。ふわっとした言葉でごまかすことなく、リベラルという政治的立場の定義から導き出される政策パッケージを断言しているのは好印象(消費税増税推しだけはどうにかしてほしいが……)。田中ゆかり『方言萌え!?』(岩波ジュニア新書、2016年)

方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く (岩波ジュニア新書)
- 作者:田中 ゆかり
- 発売日: 2016/12/21
- メディア: 新書
平澤隆、森田壮『Web制作者のためのSassの教科書 改訂2版』(インプレス、2017年)
プログラマーというより主にWebデザイナー向けのSassの解説。CSS自体の解説はほぼないので、CSSを網羅的に勉強していないぼくにとっては若干説明がほしいところもあったが、全体的にはわかりやすい。ジョージ・オーウェル『あなたと原爆』(光文社古典新訳文庫、2019年)

- 作者:ジョージ・オーウェル
- 発売日: 2020/04/24
- メディア: Kindle版
東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ、2020年)
知識人が社会にコミットメントすることと、その挫折という話で、あまり類例のない社史として楽しめる。東浩紀は、ガタガタなゲンロンの経営を批評家としての才能で無理やり成り立たせていただけで、経営者としての才能がてんでないということがうっすら見えてつらい。かなり言い訳がましい本ではあるんだが、その言い訳がましさこそが重要なんだろうなあとなんとなく思う。高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書、2005年)
論旨があまりはっきりとしておらず、スタイルも散漫なのでかなり読みづらい。とはいえ着眼点はすごくおもしろいし、ところどころ異様にエッジが効いている。馬渕浩二『貧困の倫理学』(平凡社新書、2015年)

- 作者:馬渕 浩二
- 発売日: 2015/04/15
- メディア: 新書
仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』(早川書房、2014年)

ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
- 作者:仁木 稔
- 発売日: 2014/04/24
- メディア: 単行本