読んだ本(2021/4)

4月に読んだ本のまとめ。

松尾匡『左翼の逆襲』(講談社現代新書、2020年)

反緊縮の思想的裏付けを試みているが、あまりしっくりこない。詳細はここ

乗代雄介『旅する練習』(講談社、2021年)

旅する練習

旅する練習

ぼくが乗代を読むのは2冊目で、文芸評論家からの評判もかなりいいんだけど、いやー。全然良さがわかんねえ。フェミニズム的に微妙、みたいな難もあるけど、それ以前の問題として。

山内マリコ『あのこは貴族』(集英社文庫、2019年)

あのこは貴族 (集英社文庫)

あのこは貴族 (集英社文庫)

フェミニズム的にはたいへんいい話。ザ・嫌な男という感じの幸一郎についても、最後の最後でうまいことフォローしており、嫌な気分を減らすこととフェミ的な価値観を両立させていてすごい。ただ、そのいい話成分が小説の後ろ1/3だけで、地味でしんどい前フリが長すぎる感じはしてやや退屈。

戸田山和久『教養の書』(筑摩書房、2020年)

教養の書

教養の書

戸田山じいさんが真摯に書いた「教養」についての本。詳細はここ

更科功『残酷な進化論』(NHK出版新書、2019年)

よくある軽薄な進化論本。とはいえ著者がわりとまともな研究者なので、進化論トリビアを求めるのであればいいと思う。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社、2020年)

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

たいへんしんどいADHDアイドルオタク小説。詳細はここ

相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社、2019年)

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

まあ何をいってもネタバレになるので詳細は書かないが、特殊設定ミステリーがだいぶ人口に膾炙した現代に放り込まれた怪作。一応連作短編っぽい形式ではあるのだけど、短編個々はそこまで面白いわけではないので、前半はちょっとしんどいかも。

上野庸平『ルポ アフリカに進出する日本の新宗教』(花伝社、2016年)

ルポ アフリカに進出する日本の新宗教

ルポ アフリカに進出する日本の新宗教

  • 作者:上野 庸平
  • 発売日: 2016/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
アフリカにおける日本の新興宗教の広がりについてのルポ本。キリスト教イスラム教や現地の伝統宗教などよりは、ここ100年ぐらいの間に作られた宗教のほうが合理的な教えをしている、という身も蓋もない事実が示されていて、新興宗教を良くない目で見ていることを反省させる感じはある。

浪川攻『証券会社がなくなる日』(講談社現代新書、2020年)

野村証券みたいな最大手の証券会社でも、どんどん顧客本位の営業が増えているとのこと。とてもいい話です。

原田実『江戸しぐさの終焉』(星海社新書、2016年)

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

  • 作者:原田 実
  • 発売日: 2016/02/26
  • メディア: 新書
江戸しぐさの分析およびその社会的影響の研究が、前著『江戸しぐさの正体』よりもコンパクトにまとまっている。より教育学寄りになっている感はあり、偽史研究独特の面白みは前著のほうが上か。

坂口安紀『ベネズエラ』(中公選書、2021年)

現在のベネズエラの惨状がよくまとまっている。経済政策に関する緊縮的な考え方はやや不当かなあと思うようなところもあり、正直チャベス政権での経済政策はそこそこうまくいっているように見え、明らかにマドゥロ政権の問題だろという感じはあるが、とはいえ他山の石にはなるだろう。

田中拓道『リベラルとは何か』(中公新書、2020年)

リベラル概念を中心に、新自由主義ポピュリズムなどとの比較を明確にしている。ふわっとした言葉でごまかすことなく、リベラルという政治的立場の定義から導き出される政策パッケージを断言しているのは好印象(消費税増税推しだけはどうにかしてほしいが……)。

大澤めぐみ『Y田A子に世界は難しい』(光文社文庫、2021年)

『おにぎりスタッバー』の大澤めぐみが帰ってきた。詳細はここ

田中ゆかり『方言萌え!?』(岩波ジュニア新書、2016年)

この手の議論だと「ヴァーチャルなもの」ってたいてい悪く言われることが多いんだけど、この本では「ヴァーチャル方言」がかなりポジティブに評価されていていて意外だった。

平澤隆、森田壮『Web制作者のためのSassの教科書 改訂2版』(インプレス、2017年)

プログラマーというより主にWebデザイナー向けのSassの解説。CSS自体の解説はほぼないので、CSSを網羅的に勉強していないぼくにとっては若干説明がほしいところもあったが、全体的にはわかりやすい。

ジョージ・オーウェル『あなたと原爆』(光文社古典新訳文庫、2019年)

「あなたと原爆」「絞首刑」「象を撃つ」など、代表的なオーウェルのエッセイ・評論がコンパクトにまとまっている。特に社会科学的な観点からの評論の鋭さがすさまじくてビビる。

飯田泰之ほか編『経済の論点がこれ1冊でわかる 教養のための経済学 超ブックガイド88』(亜紀書房、2020年)

リフレ・反緊縮・MMTの人のための、初心者向けブックガイドとしてはいい感じなのでは。

東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ、2020年)

知識人が社会にコミットメントすることと、その挫折という話で、あまり類例のない社史として楽しめる。東浩紀は、ガタガタなゲンロンの経営を批評家としての才能で無理やり成り立たせていただけで、経営者としての才能がてんでないということがうっすら見えてつらい。かなり言い訳がましい本ではあるんだが、その言い訳がましさこそが重要なんだろうなあとなんとなく思う。

西尾維新新本格魔法少女りすか(3)』(講談社文庫、2020年)

まあいつもどおりといえばいつもどおりなんだけど、この巻は正統派異能バトルが全然なくって、ひねくれすぎている感はある。

高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書、2005年)

グロテスクな教養 (ちくま新書)

グロテスクな教養 (ちくま新書)

論旨があまりはっきりとしておらず、スタイルも散漫なのでかなり読みづらい。とはいえ着眼点はすごくおもしろいし、ところどころ異様にエッジが効いている。

馬渕浩二『貧困の倫理学』(平凡社新書、2015年)

新書770貧困の倫理学 (平凡社新書)

新書770貧困の倫理学 (平凡社新書)

貧困を扱う倫理学者の議論をいろいろ集めた本。わりと堅めで、新書というよりもサーベイ論文に近い。

川口則弘『芸能人と文学賞』(ベストセラーズ、2017年)

芸能人と文学賞との関わりをまとめたゴシップ趣味あふれる本。まああまり類書もないだろうし、ニッチながら意外と需要もあるのでは。

福井健策『18歳の著作権入門』(ちくまプリマー新書、2015年)

問題になりそうな論点がさっくりとまとまっているので、ハンドブックとして便利そう。

仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』(早川書房、2014年)

ううーーーーん。まあ全体的に新鮮味の薄いSFという感じなので、退屈さは否めないかなあ。暴力描写とかはかなりすばらしいんですが、全体の退屈さとのダブルパンチで読書欲を減退させる感じもなくはない。まるでトランプ時代のアメリカをそのまま書いたかのような表題作には驚いたが、逆にいえばそれがなかったら全体として心を動かされなかったかも。