9月に読んだ本のまとめ。
早坂吝『四元館の殺人』(新潮文庫、2021年)
『殺人犯 対 殺人鬼』みたいなかなりくだらないミステリーで呆れてしまった。
新本格派らしくフェアではあるがフェアなだけ。文庫本で250ページ程度と、かなりコンパクトに収めてくれているのだけが救いか。
佐々木信行『温泉の科学』(サイエンス・アイ新書、2013年)
科学本としてはとくに文句はないが、ところどころに著者の保守的な考え方が(悪い意味で)にじみ出ている。
品田遊『止まりだしたら走らない』(リトル・モア、2015年)
連作短編で、個々の短編はちょっと弱くてかったるいが、まあこのオチなら満足かな。
東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』(株式会社ゲンロン、2017年)
議論の核心部分はすごく面白く、商人右翼に転向しつつある
東浩紀の思想のいい部分だけが凝縮されている。ただしその論理を補強するために
ポストモダン哲学とかネットワーク理論とか
ドストエフスキーとか色々参照しているんだが、あまり本筋に貢献しているような感じがしない。この路線でより具体的な観光の議論があるとすごく面白そう。
町山智浩、柳下毅一郎『ベスト・オブ・映画欠席裁判』(文春文庫、2012年)
ゲロゲロホモソって感じで特に町山がひどい。有名な映画ばかり取り上げているのは、
柳下『皆殺し映画通信』に若干感じていた不当さがなくて良いと思う。
「
チフスのメアリー」について、
科学史にとどまらない多面的な分析がされている。詳細は
ここ。
それなりにいい作品がまとまっているとは思うが、やはり古さは感じる。「暴走バス」、「絶壁」、「見果てぬ風」あたりは良かった。
石黒達昌『医者の本棚、作家の本棚』(アドレナライズ、2019年)
やはり医者の立場からものを言っているエッセイは面白い。
エリザベス・ハンド『過ぎにし夏、マーズ・ヒルで』(創元海外SF叢書、2021年)
とにかく全体的にダラダラとしていてかったるい。
中澤渉『日本の公教育』(中公新書、2018年)
費用便益分析とかがしっかりしているのはよいかと。
まあ題材が面白いのと、100年ほど前の受験について丹念に調べてるの
はえらい。
誰だか忘れたけど最近誰かが褒めていたので読んでみたんだが、ちょっとお花畑気味で、今さら読む本ではないかなあ。まあ10年前の本なので。。。
岩本薫『ヘンな名湯』(みらいパブリッシング、2019年)
奇を衒ったような温泉の紹介が多くて微妙だが、成分などが珍妙な温泉の紹介もちょこちょこあり、そこは興味深く読めた。
法月綸太郎『キングを探せ』(講談社文庫、2015年)
今まで
法月綸太郎シリーズについて、うじうじ悩んでいてうっとおしいなあと思っていたんだが、そういううじうじがいざなくなってみると、圧倒的に無味乾燥に思えた。かなり大掛かりな交換殺人を文庫300ページにコンパクトにまとめたという点のみ感心はできる。
井出明『ダークツーリズム』(幻冬舎新書、2018年)
わりと観光ガイド感が強い。理論面はそこまで深掘りされてないかな。