なんでミステリー作家がわたモテアンソロジーを!?/谷川ニコほか『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 小説アンソロジー』

いや普通さ、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の小説アンソロジーがあるって聞いたら、参加者のメンツって渡航とか平坂読とかだろうなと思うじゃないですか。なんでやたらと豪華なミステリー作家たちがわたモテアンソロジーを書いているんですかね? 特に、若手ミステリー作家ならともかく、ゴリゴリにロートル辻真先が参加しているのにはぶったまげた。全体的には、2019年刊行ということで、わたモテの百合マンガへの転向を踏まえた作品が多いのでまあまあかな。

個別の感想としては、ミステリー作家らしさを出しているのは円居挽「モテないしラブホに行く」。まあたいした話ではないんだけど、わたモテ的なノリに自然にミステリーを溶け込ませている。マイナーキャラに焦点を当てた青崎有吾「前髪は空を向いている」相沢沙呼夏帆は目の付け所が良い。谷川ニコ「モテないし夏休みのとある一日」は、原作のつまらないエピソードを小説化したような感じで、まあどうでもいいかな。漫画家に小説は期待するなというのはあるけど、じゃあ書くなよとも思う。しかしワーストはまさかの辻真先「私がウレないのはどう考えても読者が悪い!」で、メタネタがダダ滑りしていてつまらない上に痛々しい。