7月に読んだ本のまとめ。
戸田山和久『恐怖の哲学』(NHK出版新書、2016年)
感情の哲学・ホラー論・意識の哲学と盛りだくさん。詳細は
ここ。
戦国時代を舞台に安楽椅子官兵衛の推理が冴えわたる。詳細は
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五十嵐杏南『ヘンな科学』(総合法令出版、2020年)
イグ
ノーベル賞の研究内容のアンチョコ本。まあ軽いノリで気軽に読めて、ネタとして消費されがちなイグ
ノーベル賞の学術的側面をふわっと知れるので悪い本ではないと思う。風刺的な受賞がまったく取り上げられていないのは片手落ちという意見もあるかもしれないが、今までは風刺的な側面が過度に強調されすぎていた向きもあるのでまあこれはこれでアリでは。
裕夢『千歳くんはラムネ瓶のなか』(ガガガ文庫、2019年)
うーん
脱オタものを非オタ側の視点でやるのってだいぶ痛くなる感じがある。
モチーフそのものは電波オカルト系ホラーとしてありふれているんだけど、丁寧に
ジュブナイル小説に落とし込んでいるのと、全体を漂うノスタルジックな雰囲気がよい。
ジュブナイル特有の不自然な神の視点が若干違和感あった。
ハーラン・エリスン『死の鳥』(ハヤカワ文庫SF、2016年)
ずいぶん素っ頓狂な作品が多く、ピンとこないものはとことんピンとこないが、異様さに惹かれるものも一定数ある。「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」、「死の鳥」、「北緯38度54分、西経77度0分13秒 ランゲルハンス島沖を漂流中」、「ジェフティは五つ」あたりが特に好み。
五藤隆介『チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理』(秀和システム、2015年)
料理の理屈が理解できる本。詳細は
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特に表題作などは非常に鮮やかな論理展開で、奇説をうっかり説得されてしまいそうな勢いで披露していて見事。一方で
本能寺の変や
明治維新についてはやや強引な部分も見られるし、なにより早乙女静香の扱いがややマンスプレイニングめいていてそこは微妙。
大澤めぐみほか『CQ:3つの愛の物語』(本物川雑技団、2021年)
大澤めぐみ目当てで読んだが、表題作である水瀬はるかな「
CQ」が一番良かった。いい意味で多様性のすばらしさに満ち溢れている。大澤めぐみ「清潔なしろい骨」は途中までレイプとかを雑に使うような軽薄さがあってあまり好きではない。主人公が死んでからの展開は悪くはないが、
乙一『夏と花火と私の死体』のような先行例もあるのでめちゃくちゃ斬新というわけでもない。
辻真先『仮題・中学殺人事件』(創元推理文庫、2004年)
「読者が犯人」という触れ込みが目を引くが、肝心のその部分は
コルタサル「続いている公園」とかほど鮮やかではない。そしてそれよりも重大な問題が、この本の大部分が中学生の書いたミステリー作中作ということになっていて、稚拙なミステリーを延々と読まされるハメになるというところ。流石に意図的なものではあるとは思うが、それにしたってクソつまんない
カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』(NHK出版、2019年)
むむむむ難しい……。
相対性理論ぐらいまでの物理学を扱う範囲だとなんとかある程度理解が追いついたが、著者の専門でもあるループ量子重力理論はちんぷんかんぷんだった。比喩が圧倒的に上手いので一発で腑に落ちる部分も多いが、やはり丁寧な数式の解説もほしくなっている。