類書と比べてもいい本だが、ややスベり?/戸田山和久『最新版 論文の教室』

ちょっと引用などについてのルールがしっかり書いてある本を持っておきたかったので、せっかくなので戸田山和久が書いた本書を購入した。全体的には、レベルの低い層に対するフォローが丁寧。この手の本だとたいていレポートや論文などの形式面ばかりが取り沙汰されがちだと思うんだけど、適切な問いの立て方や論文の方針の発想法など、意外とつまづきそうなトピックについてもフォローされており、かなりいい感じ。また、戸田山専門の科学哲学や論理学(専門というと微妙かもしれないが、教科書は書いているので、一応)の知見が論証の構造の説明にふんだんに活かされているのもポイント高い。

その一方で難点なんだけれども、著者は「類書は面白くないので、面白い本を書いたぞ!」と息巻いているんだけど……ややスベってない? まあ戸田山の文体はもともとくだけた口調やらオヤジギャクやらを頻繁に使用するものなので半分ぐらいはもともと微妙にスベってるというのはあるかもしれないし、ぼく自身はここまでくだけた文章じゃなくても読めるからというのもあるのだけれど、それにしても以前読んだ『教養の書』にしろ『恐怖の哲学』にしろこんなにスベってる感はなかった気がする。対話形式を一部取り入れているのが微妙なのかな。でも似たような形式でも『科学哲学の冒険』とかあったし……。面白い本だと自称している割にそこまで面白いわけではないのが、スベり感を生んでいるのかもしれない。

とはいえ、スベっていても内容の良さは変わらない。もし論文の書き方についての本を必要としているのであれば、内容的には文句なしにおすすめできる。