再公営化の流れが来ているのは喜ばしい/岸本聡子『水道、再び公営化!』

フランスやイギリスなど今まで民営化が進んでいた水道が、近年再公営化されるというトレンドがあり、それについて追った本。もちろん背景にあるのは反緊縮政策で、ポデモスとかコービンみたいな別のところで聞いた名前がここでも出てくる。個人的には民営化したもろもろのインフラを再公営化するというのはケインズ的政策の中でも優先してやるべきことだと思っているので、そういう再公営化政策がうまくいっているのを実感できてよかった。

まあ正直なところ、対岸の火事気味になっているところはあるかも。著者は日本もヤバいと煽ってはいるが、麻生太郎とかが民営化を匂わせてはいるものの、この本が出てから2年の間に水道民営化の魔の手が日本を腐らせるという状況にはなっていないと思うし。とはいえまあ、この程度なら多少煽っても問題ないような気もする。

あとちょっとおもしろいのが、著者はかなり強く左派色を打ち出しているんだけれども、この本には安倍政権の悪口は一切出てこないところ。まあ安倍政権はそれなりに経済左派だったので、麻生みたいな厄介政治家を除けばそこまで水道民営化の流れにはなりにくいと思うんだけど、それについて一切触れないというのは無理筋の批判をするよりかは誠実かなとは思う。その一方で、山本太郎をはじめとする日本の左派ポピュリズムについてノータッチなのはちょっとなあ。