妊婦を救うのはフェミニズムではなくスピリチュアリティだった/横迫瑞穂『妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ』

妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ言説を丹念に追って、だいぶ胡散臭いスピリチュアルな思想が多くの妊婦・母親の精神的な支えになっているということを示した本。ある種のフェミニズムの限界、あるいは課題を明示したものとしてたいへん意義深いと思う。

スピリチュアリティに支えられている妊婦も多いのだからあまり攻撃すべきではない、という意見はわかるっちゃあわかるんだが、実際精神的にはともかく物理的には害も多そうで、なおかつフェミニズムに何ができるかという課題も薄いため、やはりちゃんと批判すべきだったのではとは思う。あと、研究対象を書籍に限定したのはかなりよろしくなく、妊娠出産スピリチュアリティセミナーとか体験会みたいな実際の活動を通じて広められていることは想像に難くないので、これだと肝心な部分が抜け落ちていそう。とはいえこれは、書籍だと調査がしやすいという面もあるため、仕方ないといえば仕方ないかも。