長編エッセイで振り返る木下古栗の20年/フリー・グーグルトン『高尾症候群』

「珍フルエンサー栗美」最終回でも予告されていた、ある意味で木下古栗の集大成ともいえるような長編エッセイ。これまで各種小説やエッセイで断片的に語られてきた古栗の思想が、有機的なつながりを持って一冊の本にまとまっている。

思想的には相当に過激なので、賛同できるかは微妙。たとえばポモ的な文芸批評の批判はまあいいとしても、そのアンチテーゼとして古栗が想定する「(人文)科学的な文学」は相当に偏狭なものなので、こんな文章を書いたぼくですら、全面的には賛成できない。とはいえ、こういう偏狭な文学観があるからこそあのような作品群を書いたというのはあると思うので、古栗ファンなら絶対に読むべきだとは思う。