楽しくゲームでプログラミングのトレーニング!(ただし難易度は高い)/「ヒューマン・リソース・マシーン」

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プログラミングのおべんきょうにはとてもいいでしょう。足し算と引き算とジャンプしかないようなたいへんシンプルなコマンドで、掛け算・割り算・ソート・フィボナッチ数列素因数分解などなどとても多様な計算を表現できる、ということに感動した。中高生あたりがやるととても勉強になるだろう。

ただし難易度はかなーり高い。調べてみると、本職のプログラマーでも何も見ずにクリアするのは難しいらしい。ぼくも、一部の問題はまったく歯が立たずに攻略サイトを見てしまいました。

気になった点としては、そもそもこれNintendo Switch向けかなあ? Joy-Con操作はやや煩雑なので、快適に操作したいならタッチパネルが使える携帯モードのほうがいい。でも、それならそもそも3DSでタッチペン使ったほうがいいのでは? できれば3DSでやりたかったなあ。

現政権下だとなぜか妙なリアリティ/「ペルソナ5」

ペルソナ5 - PS4

ペルソナ5 - PS4

 

 まず驚いたのは、ストーリーで攻略するダンジョンの凝りっぷり。「P3F」や「P4G」と比べても仕掛けもおもしろく、ダンジョンの造形もかなりよくできてる。簡単な操作で手軽にステルスゲーを楽しめるというのも楽しい(ぼくはアクションがド下手なので、「MGS1」ですら苦労したので……)。また、サブダンジョンのメメントスも、「3」のタルタロスほどマンネリ感はなくちょうどいい。

加えていえば、グラフィックなども前作などから比べて格段に向上している。「4」ではCGやアニメの粗さがわりと気になったので、それが向上しているのはとてもよかった。

 

ただしストーリー面はかなーり残念。メインストーリーはひたすら夜神月を褒めるだけの『DEATH NOTE』といった感じでイマイチ乗り切れない。そして、輪をかけてひどいのがサブストーリーで、かなりの部分が「悪い大人に虐げられる弱い人が怪盗の力を使って助かる」の一言に集約されてしまう。さらにサブストーリーを進めるにあたってはやたらと主人公のパラメーターを要求されるため、行動もかなり制限されがち。

また、ダンジョンをクリアしてしまうと2度と入れなくなってしまうというのもよろしくない。2度と入れなくなるダンジョンがあるというのは「3」でもあったが、前述の通り今作のメインダンジョンはかなり凝ったものになっている分よけいに残念。さらにいえば、アイテムの回収が後からできなくなるというプラグマティックなデメリットもある。

全体的に、いろいろな面で不満が多い。1周する分には楽しいですが、周回プレイはちょっと……。

 

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これに次回作があるの!?/ベン・アフレック「ゴーン・ベイビー・ゴーン」

 話自体は優等生的な作りで、たいへんよくできましたといった感じ。若干登場人物が多いので混乱はするかもしれないが、話の流れの説明は丁寧なので、何を言っているのかさっぱりわからない、ということはないはず。緊迫するアクションシーンもままあり、エンタメとしてとても楽しめる。そしてラストの後味の悪さもすばらしい。

 

……とか思いながら原作者のWikipediaを見てびっくりしたんだけど、これシリーズものなのねー。たしかに、探偵をわざわざ2人にする意味があまりわからなかったので(女探偵(ミシェル・モナハン)もたいして活躍してなかったしね)、変な設定だなーと思ってみていたんだけど、まさかシリーズものだったとは。しかも、この恐ろしく後味の悪いラストに次回作がある!!!

うーん正直原作まで読むほどには心を奪われなかったのだけれど、この胸糞ラストの次回作がどんな小説なのかだけは見てみたい気もする……。

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泥臭く真実を追い求めた男の話で、ポスト真実の時代におすすめの映画/ジェームズ・ソロモン「38人の沈黙する目撃者」

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キティ・ジェノヴィーズ事件という事件がある。概略は以下の通り(面倒なのでWikipediaの引用)。

キティ・ジェノヴィーズ事件とは1964年3月13日、アメリカニューヨーク州クイーンズ郡キュー・ガーデン地区で発生した殺人事件である。この地区に住むキティ(Kitty)ことキャスリーン・ジェノヴィーズ(Catherine Genovese)が帰宅途中であるキューガーデン駅の近くで暴漢ウィンストン・モースリー(Winston Moseley)に殺害された。ニューヨーク・タイムズは、彼女は大声で助けを求めたが、近所の住人は誰ひとり警察に通報しなかったと報じた。この事件がきっかけとなり、傍観者効果が提唱された。

 この事件、アメリカを中心に多くの人にかなりショックを与えたようで、傍観者効果という言葉は心理学の教科書にも載っているらしい。そしてジャーナリストのローゼンタールという人は、『38人の沈黙する目撃者』という本を書いてベストセラーになったそうな。

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私小説とエッセイのあいだをいったりきたりする奇妙な小説(?)/円城塔『プロローグ』

プロローグ (文春文庫)

プロローグ (文春文庫)

 

 話の筋を理解するのは大変むずかしいと思う。そもそも説明少なめのメタフィクションなので、一読でちゃんと話を理解させる気もないだろうし。たぶん実ははっきりとした筋もあるとは思うんだけど、膨大なリソースを費やさないときっちり把握できないような気がしたので断念。

それでもこの小説が面白いのは、円城塔の趣味が全開だからだ。統計やらプログラミングを小説に応用するのは、最近話題となったAIハリー・ポッターなんかをみても、かなり有効な手段であるというのは間違いないはず。その最前線の作業を、小説というテキストのなかで生で見ることができるというのはとても楽しい。

また、出版を巡る大量の愚痴も必見。ぼくもちょっとだけ出版にかかわる仕事をしていたからわかるのだけど、びっくりするような前時代的行為が行われていること、あるんだよねー。円城は、それが単に前時代的で無駄であるというだけでなく、実際に本を作る作業において支障をきたすことがある、ということを指摘している。たかが私小説(エッセイ?)と侮るなかれ。本書には、出版業界が解決すべき問題が山盛りなのだ。

ということで、普通の小説として楽しむのはけっこう難しいような気もするが、出版や本とコンピューターの関係についてのエッセイとして読むととても楽しめるのではないか。おすすめです。

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