雑文

家政婦の歴史と、木下古栗の受けたパワハラ

家政婦の歴史 (文春新書)作者:濱口 桂一郎文藝春秋Amazon濱口桂一郎の新刊『家政婦の歴史』を読んだんだけどこれがとんでもなくすさまじい本で、労働法にひっそりと書かれた時代錯誤な条文が戦後から今の今まで生き残っており、なおかつそのことに誰も気づい…

なぜ市川沙央『ハンチバック』ではネットスラングが多用されているのか

ハンチバック (文春e-book)作者:市川 沙央文藝春秋Amazon市川沙央『ハンチバック』についてもういっちょ。『ハンチバック』を読んでふと気になったのは、ネットスラングの多さだ。「◯◯み」とか純文で使う言葉じゃねーぞ。中卒の人間が大学の通信課程に通うの…

なぜ市川沙央『ハンチバック』の冒頭には三文エロ記事があるのか

ハンチバック (文春e-book)作者:市川 沙央文藝春秋Amazon重度の障害を持つかたわら文學界新人賞・芥川賞を受賞し、挑発的な記者会見も含めてたいへん話題となった市川沙央『ハンチバック』ですが、この小説の冒頭には「都内最大級のハプバに潜入したら港区女…

イグノーベル賞のハイゼンベルグ確定性講演は廃止され、24/7レクチャーとなった

ヘンな科学 “イグノーベル賞” 研究40講作者:五十嵐杏南総合法令出版Amazonイグノーベル賞にはハイゼンベルグ確定性講演という短いスピーチがあるというのを、山形浩生がポール・クルーグマンの講演を訳したもので知っていた。 cruel.org ……のだけれど、この…

トヨザキ社長、ぼくの書評が杜撰じゃなくてTikTokerけんごの小説紹介が杜撰だとは思えないんですけど

石原慎太郎を読んでみた ノーカット版 (中公文庫)作者:栗原裕一郎,豊崎由美中央公論新社Amazontogetter.com 書評家の豊崎由美が、小説紹介をするTikTokerけんごのことを批判して炎上している。けんごのことはぼくは噂でしか知らなかったので、あらためてちょ…

木下古栗「天使たちの野合」が『変愛小説集 日本作家編』文庫版から削除されているのは講談社とトラブったため?

変愛小説集 日本作家編作者:川上 弘美,多和田 葉子,本谷 有希子,村田 沙耶香,木下 古栗,小池 昌代,星野 智幸,津島 佑子,吉田 知子,深堀 骨,安藤 桃子,吉田 篤弘講談社Amazon木下古栗は単著に収録されてない短編小説が大量にあるのだけれど、その1つが岸本佐…

伴名練編『日本SFの臨界点 新城カズマ』解説に『魔界探偵 冥王星O』についての記述がない

日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人 (ハヤカワ文庫JA)作者:新城 カズマ早川書房Amazon伴名練編のアンソロジーシリーズ『日本SFの臨界点』シリーズは、単純なアンソロジーとしての面白さもさることながら、とんでもなく分厚い解説にも定評がある。…

木下古栗『人間界の諸相』特設ページに掲載されていたエッセイについての調査メモ

人間界の諸相 (集英社文芸単行本)作者:木下古栗集英社Amazonsave-as.hatenablog.com 前々からちょこちょこ木下古栗全作品リストを更新しているのだけれど、先日コメントにてこんな情報提供をいただいた。 で、ここからはだいぶあやふやな情報になってしまう…

「作者の死」の死

物語の構造分析作者:ロラン・バルトみすず書房Amazon 要約 「作者の死」でバルトは「作者」を時代の産物としているが、そうであれば時代の変化により「作者」が復活する可能性がある。そして現代では、インターネットによって「作者」の存在が強化されるので…

オタクの原作主義はフェミニズムと相性が悪い

要約 フェミニズムの、女性差別的な描写をなくすべきという思想は、オタクの原作主義と相性が悪い。そしてそれが原因で、「オタクはアンチフェミ」というように見えやすいのではないか? ポケモンのタマムシシティにいる、ジムを覗いているおじいさん、海外…

『三体』が「傑作」と評価される理由と、それでも『三体』が面白い理由

三体作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版三体Ⅱ 黒暗森林(上)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版三体Ⅱ 黒暗森林(下)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版 要約 『三体』は様々な理由から「傑作」という過大評…

伊藤計劃『虐殺器官』の痛覚マスキングは著者の実体験が元ネタかも

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版伊藤計劃のブログを読み漁っているんだけども、意外なところから作品とのつながりが見えるのが面白い。その一つが、伊藤計劃は病気の影響で右足の痛覚が失われたようで、そのせ…

ユニバーサルデザインは障害者だけでなく健常者の利益にもなる

webtan.impress.co.jp webアクセシビリティについてのこの記事を読んであらためて気づいたのは、障害者にとって使いやすいwebサイトは、健常者にとっても使いやすいんだなということ。色覚異常者のためのアクセシビリティ対応をすると、日差しで画面が見づら…

木下古栗と反緊縮

早稲田文学 記録増刊 震災とフィクションの“距離” 作者: 古川日出男,阿部和重,円城塔,川上未映子,福永信,青木淳悟,芳川泰久,重松清,中村文則,村田沙耶香,中森明夫,木下古栗,鹿島田真希,斎藤環,松田青子,牧田真有子,朝吹真理子,篠山紀信 出版社/メーカー: 早…

リスク分散としてのフェミニズム(と、渡部直己のセクハラ問題)

早稲田文学増刊 女性号 (単行本) 作者: 早稲田文学会 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/09/20 メディア: ムック この商品を含むブログ (3件) を見る 要約 「女性(あるいはフェミニスト)が一体となって抗議する運動」は、「その運動に参加することに…

「スマホでamazonのほしい物リストに商品を入れられない」場合の解決方法

要約 スマホでamazonのほしい物リストに商品を追加するときにエラーが発生する場合は、ブラウザでPC版サイトを開いて商品を追加するとと解決する。

鳩山由紀夫のスポーツ論文

ヤバい経済学 [増補改訂版] 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2007/04/27 メディア: 単行本 購入: 34人 クリック: 437回 この商品を含むブログ (246件) を見る 『ヤバい経済学…

「レヴィットの大相撲研究は行動経済学」?:あるいは「行動経済学」という名称のややこしさについて

ヤバい経済学 [増補改訂版] 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2007/04/27 メディア: 単行本 購入: 34人 クリック: 437回 この商品を含むブログ (246件) を見る 『超ヤバい経済…

プラグマティスト(≠ミニマリスト)が手元に残しておく本

プラグマティズム入門 (ちくま新書) 作者: 伊藤邦武 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/01/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 新品中古問わず、まだまだ紙の本を買うことが多いため、必然的に本棚は膨れ上がる。そうなっても普段は問…

コウメ太夫はいつから数珠をつけているのか?

www.youtube.com 2016年11月13日放送の『クイズ☆スター名鑑』で、コウメ太夫が常に数珠を身に着けていることが話題になった。他の芸人に言われて数珠を外したコウメ太夫は、明らかに挙動不審になっている。インチキオカルトグッズを買ってしまったが、この数…

木村資生と愛国教育(?)

生物進化を考える (岩波新書) 作者: 木村資生 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1988/04/20 メディア: 新書 購入: 18人 クリック: 133回 この商品を含むブログ (45件) を見る 「進化論の通俗的理解」みたいなものに対する興味から、本屋で高校生物の参考書…

図書館と電撃文庫

独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑) (電撃文庫) 作者: 野崎まど,森井しづき 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 発売日: 2015/02/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (14件) を見る 要約 図書館の本は基本的に透明なブックカバ…

象牙と進化論リテラシー

news.livedoor.com おー、「進化」ですかあ……。 ぼくは、結構な割合の人間が、ダーウィニズムすらちゃんと理解していないということをなんとなく知っているので、まあ驚きはしないけれども、あらためてこう見せられるとげんなり。 ところで、こういう進化論…

ポケモンの次回作には新しいアローラ地方が登場する

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トランプ現象とテッド・チャン

あなたの人生の物語 作者: テッドチャン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/09/30 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る ぼくが記事を書くのをサボってる間にドナルド・トランプが大統領選で勝ってしまい、これは便乗記事を書かなけ…

鳥居みゆきの熊のぬいぐるみは人間かもしれない

お笑い芸人鳥居みゆきがいつも持ち歩いている熊のぬいぐるみの名前は「多毛症」といって、ネタで使われることはなく、共演者に触れられると「熊なんていません」みたいな返しをする。鳥居みゆきは電波キャラ(婉曲表現)なので、まあ妄想ボケみたいな感じで…

ソシュールとハム太郎

とっとこハム太郎2 ハムちゃんず大集合でちゅ 出版社/メーカー: 任天堂 発売日: 2001/04/21 メディア: Video Game クリック: 5回 この商品を含むブログを見る 最近たまたま、早坂吝『虹の歯ブラシ』とか下條信輔『〈意識〉とは何だろうか』とか橋爪大三郎『…

電子書籍の引用が浸透しない理由

割と最近になってから電子書籍を頻繁に使うようになって驚いたこと。電子書籍の引用方法って全然浸透していないんですね。考えてみると、レポートの書き方やら引用の作法やらを見ても、電子書籍の引用のフォーマットはあまり見なかった気がする。 このことに…