「孤城」というもうひとつの学校について/辻村深月『かがみの孤城』

この小説に出てくる「孤城」は、一見するとファンタジーな空間ではあるが、フリースクールと同様、明らかに学校に馴染めなかった人向けの学校の代替物となっている。この小説に登場する人物は、みんなうまく学校に馴染めないが、孤城での1年間の交流を通して成長していく。主人公のこころは、最終的にはトラウマを克服し、学校に通うようになる。そんな美しい物語だ。

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凝りすぎでは?/「DELTARUNE Chapter.2」

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そのとんでもない凝りっぷりは「UNDERTALE」に勝るとも劣らない感じで、Chapter.2の時点でもうアンテの半分ぐらいのボリュームはあるんじゃないか。2からはアンテのGルートのような分岐要素もあり、たいへん期待できる。

ただ、開発ペースは遅すぎて心配。Chapter.1を発表してから2を出すまでに3年かかっているわけで、このままだと完成版が世に出るのは単純計算で15年後になってしまう。もちろん個人制作なので時間がかかるというのはわかるんだが。。。

それを踏まえた上で気になるのは、ストーリーの要所要所でちょっとしたミニゲームがあること。めちゃくちゃおもしろいとは言い難く、まあなくってもいいんじゃないかというような感じのミニゲームがかなり多いのが、かなり開発の負担になっているんじゃないかなとは思う。せっかく戦闘システムが独創的なのだし、そのフォーマットの中でいろいろなゲームを実装しても、誰も文句言わないと思う。

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前田敦子のおかげで割と見れる/黒沢清「旅のおわり世界のはじまり」

要約すると本当にこじんまりとしたストーリーなような気はするのだけれど、黒沢清の演出と前田敦子の魅力のおかげでなんとか2時間持たせているというような感じ。特に前半の不穏な雰囲気とかは、黒沢ホラーがうまいこと転用されていてよかった。前田敦子は嫌な女感を出すのが抜群にうまく、こちらも全体的な不穏さに貢献している。にしたって2時間はなげーよとは思うが。あと、ぼくは個人的に染谷将太がすごく苦手なのだけれども、今作ではすごく嫌な役をやってくれたおかげで、あまり違和感はなかった。

学際の見本/金森修『病魔という悪の物語』

これは学際の見本だなあ。公衆衛生学であると同時にその科学史でもあり、歴史学の側面もあり、言語学やメディア学にも片足を突っ込んでいる。コロナ下の現在ということも踏まえて、読んで損することはないはず。新書でしかできない、蛮勇の本だと思う。欲をいえば、トロッコ問題に近い話ではあるので、道徳哲学みたいな部分とも接続してほしかった。

本職の声優じゃない人には重要な役やらせないでほしい/細田守「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」

細田がよくやる、不自然さすらあるシンメトリー構図が、映画全体の不穏さに貢献している。音楽も、話の緩急をつけるのにかなり効果的に使われている感じ。敵キャラの造形も「マブラヴ・オルタネイティヴ」かよって感じでとてもよかった。ストーリーとしては中盤の仲間割れの部分がちょっと不自然に感じた。他の仲間もロビンとかチョッパーみたいにフラフラっとどっかいったら捕まっちゃう、みたいなほうが自然だったかなあ。

あと、女の子を演じている永井杏という女優が声の演技がかなり下手で、でもまあ脇役ならいいかと思っていたんだが、後半で思った以上にその女の子の見せ場があって勘弁してくれーと思った。わりといいシーンだったのにノイズがひどい。本職の声優じゃない人を起用するのはいいけど、演技下手ならあんま重要じゃないキャラの声で起用してほしいなあ。