小説

だいぶ不条理度高めの短編集/今村夏子『木になった亜沙』

木になった亜沙 (文春e-book)作者:今村 夏子発売日: 2020/04/06メディア: Kindle版『あひる』とか『むらさきのスカートの女』とかよりもだいぶ不条理度高め。今村夏子って基本的にはリアリズムの作家だと思っていたので意外だった。とはいえ面白い。表題作「…

「伝法的異世界」を気軽に(?)味わえる短編集/酉島伝法『オクトローグ』

オクトローグ 酉島伝法作品集成作者:酉島 伝法発売日: 2020/07/02メディア: Kindle版酉島伝法の短編集。短編でも、異形バリバリ造語ゴリゴリな「伝法的異世界」の魅力は遺憾なく発揮されている。『皆勤の徒』を絶賛積読中のぼくからすると、各短編が多くても…

酉島伝法「環刑錮」読書メモ

オクトローグ 酉島伝法作品集成作者:酉島 伝法発売日: 2020/07/02メディア: Kindle版酉島伝法「環刑錮」(『オクトローグ』早川書房、2020年)の読書メモ

ライトノベルも一手間加えれば不条理文学になる/西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)作者:西尾維新発売日: 2016/10/14メディア: Kindle版「私には23人の妹がいて~」なんて一見するとただのクソみたいなライトノベルのようだが、文体を少し古めかしくして不条理要素を混ぜ合わせると、一気に不条理文…

「誰でもわかる」文学理論/小林真大『文学のトリセツ』

文学のトリセツ ー「桃太郎」で文学がわかる!作者:小林真大発売日: 2020/03/12メディア: 単行本(ソフトカバー)文学理論は、文学に興味のある人にのみ必要なものと思われがちである。しかし実際のところ、文学理論的なものの見方は、あらゆるテクストに対し…

プロパガンダ装置としての役割に焦点を当てた「山月記」研究/佐野幹『「山月記」はなぜ国民教材となったのか』

「山月記」はなぜ国民教材となったのか作者:佐野 幹発売日: 2013/07/31メディア: 単行本おもしろい。「山月記」という短編が、様々な人間の思惑によって、「国民教材」に相応しい小説として教科書に掲載され続け、読まれ続けてきたというのが、丹念な調査に…

『三体』が「傑作」と評価される理由と、それでも『三体』が面白い理由

三体作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版三体Ⅱ 黒暗森林(上)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版三体Ⅱ 黒暗森林(下)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版 要約 『三体』は様々な理由から「傑作」という過大評…

人類規模での壮大な足の引っ張り合い/劉慈欣『三体Ⅱ』

三体Ⅱ 黒暗森林(上)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版三体Ⅱ 黒暗森林(下)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版ハードカバー2冊使って人類規模での壮大な足の引っ張り合いをするという、あんまり読んだことのないタイプのSF…

連続殺人が許されない世界の特殊設定ミステリー/斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版テッド・チャン「地獄とは神の不在なり」にインスパイアを受けた特殊設定ミステリー。元ネタが偉大なのと、特殊設定が法月綸太郎的な「悩める探偵」の問題意識にうまく接続され…

伴名練の趣味全開のSFアンソロジー/伴名練編『日本SFの臨界点』

日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙 (ハヤカワ文庫JA)発売日: 2020/07/16メディア: Kindle版日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族 (ハヤカワ文庫JA)発売日: 2020/07/16メディア: Kindle版『恋愛篇』は、わりと読みやすい短編が揃っている…

最低限はミステリーしてると思う/西尾維新「戯言シリーズ」

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)作者:西尾維新発売日: 2016/05/06メディア: Kindle版ミステリーじゃない! という評判が多いシリーズではあるが、最終巻を除いて、最低限の核はちゃんとミステリーになっていると思う。ミステリーのお…

膨大なデータで読む芥川賞の歴史/川口則弘『芥川賞物語』

芥川賞物語 (文春文庫)作者:則弘, 川口発売日: 2017/01/06メディア: 文庫芥川賞受賞作・候補作の簡単な紹介からゴシップまで、芥川賞の歴史が手ごろな形でまとまっている。特に石原慎太郎以前の話は、芥川賞の話題としてもり取り上げられることが少なく、文…

木下古栗全作品リストを作りました

木下古栗オタクたるもの、いい加減木下古栗の未収録短編を読まねばならないと思い、とりあえず木下古栗の全作品リストを作りました。wikipediaと国会図書館とその他諸々の情報を継ぎ接ぎしてとりあえず作ったため、漏れ・抜け・間違いなど多々あると思うので…

木下古栗全作品リスト

木下古栗の全作品をリスト化しました。 漏れ・抜け・間違いなど、見つけた方はコメントいただけると助かります。

未完成の小説の続きをAIで執筆した衝撃の長編小説集/木下古栗『サピエンス前戯』

サピエンス前戯 長編小説集作者:木下古栗発売日: 2020/08/26メディア: 単行本『文藝』に「新連載」と称して第1回のみが掲載されていた3作に、それぞれ「その後の展開」を加筆した小説集。それを加筆するにあたって、表題作「サピエンス前戯」の中で「ある程…

伴名練っぽさの詰まった佳作短編/伴名練『全てのアイドルが老いない世界』

全てのアイドルが老いない世界(小説すばる Digital Book)作者:伴名練発売日: 2020/07/17メディア: Kindle版手持ちの駒で器用に短編を一本作り上げた感じかな。百合・吸血鬼・歴史改変と伴名練がよく使っている要素で構成された小説なので、新鮮味は薄い。…

真っ当な社会不適合者と不気味な語り手のハーモニー/今村夏子『むらさきのスカートの女』

むらさきのスカートの女作者:今村 夏子発売日: 2019/06/07メディア: Kindle版うおーこれはすごい。存在感のない語り手が忘れたころに現れる不気味さよ。前半~中盤は『コンビニ人間』感もあり、社会不適合者の社会復帰話とストーカー話を無理なく両立させて…

スタニスワフ・レム『虚数』読書メモ

虚数 (文学の冒険シリーズ)作者:スタニスワフ レム発売日: 1998/02/01メディア: 単行本スタニスワフ・レム『虚数』(国書刊行会、1998年)の読書メモ。

ブログが「抜粋」であることに注意/伊藤計劃『伊藤計劃記録(1・2)』

伊藤計劃記録 I (ハヤカワ文庫JA)作者:計劃, 伊藤発売日: 2015/03/20メディア: 新書伊藤計劃記録 Ⅱ (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2015/09/30メディア: Kindle版伊藤計劃が書いた小説以外の文章を集めたもの。いろいろな雑誌などに書いたエッセイと…

伴名練「白萩家食卓眺望」読書メモ

SFマガジン2020年04月号発売日: 2020/02/25メディア: 雑誌小説の最後で、共感覚を後天的に身につけることができるという研究が紹介される。そしてそれを元にして、平太郎は味覚→視覚の共感覚を後天的に身につけたのではないか、という可能性が示唆される。

伊藤計劃『虐殺器官』の痛覚マスキングは著者の実体験が元ネタかも

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版伊藤計劃のブログを読み漁っているんだけども、意外なところから作品とのつながりが見えるのが面白い。その一つが、伊藤計劃は病気の影響で右足の痛覚が失われたようで、そのせ…

悪ふざけ一歩手前の死体遊びアンソロジー/藤井太洋ほか『屍者たちの帝国』

書き下ろし日本SFコレクション NOVA+ 屍者たちの帝国 NOVA (河出文庫)発売日: 2015/10/30メディア: Kindle版いやーいいわあ。伊藤計劃の小説の特徴の一つに、「悪ふざけ一歩手前で楽しく小説を書く」というのがあるとぼくは思っているんだけど、その…

9年間おつかれさまでした/渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(14)』

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (14) (ガガガ文庫)作者:航, 渡発売日: 2019/11/19メディア: 文庫まあ正直、大きな驚きもなく、9年前と同じように終わっていった感はある。9年前とほとんど変わらないノリで描かれる一人称の文体は、気がつくとあま…

信じられないくらい読みやすい/劉慈欣『三体』

三体作者:劉 慈欣出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: ハードカバー(ベストセラーのくせに)意外にも、アホみたいにスケール広げたバカSF一歩手前の小説といった感じで、けっこう楽しめた。特に後半1/3ぐらいの面白さはホンモノ。ただ、…

当代最高のSF作家の、オーソドックスなSF短編集/テッド・チャン『息吹』

息吹作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/04メディア: 単行本当代最高のSF作家テッド・チャンの、17年ぶりに刊行された第2短編集。オーソドックスなテーマを扱いながら、チャン流の文学的な味付けと情報の圧縮により、大変キレのあ…

先制パンチ喰らって頭がぐらぐらする短編集/村田沙耶香『生命式』

生命式 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 村田沙耶香の本領発揮といった感じの短編集。まあアイデア一発勝負というか出オチ感はあるんだが、それでもちゃーんと印象に残る…

ケン・リュウの中国SFの紹介ってだいぶ偏ってたんじゃ……/郝景芳『郝景芳短篇集』

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス) 作者: 郝景芳,及川茜 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2019/03/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 短編集としてはそこそこといったところ。SFアイデアとしてぎょっとするようなものはあんまりないが、端正な…

日本ホラー小説大賞の懐の深さをあらためて実感する/恒川光太郎『夜市』

夜市 (角川ホラー文庫) 作者: 恒川光太郎 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る じ、地味ぃ……。ファンタジーの割にちょっととりとめもなさすぎる感じはして、可もなく不可もなくかなーと。決して悪…

ここ20年ぐらいのオタクコンテンツの結晶/伴名練『なめらかな世界と、その敵』

なめらかな世界と、その敵 作者: 伴名練,赤坂アカ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/08/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 年刊日本SF傑作選によく載ってるなーという印象が強かった伴名練の短編集で、コアな国内SFファン待望の1冊だろ…

蘇部健一の面白がり方がようやくわかったかも/蘇部健一『六とん2』

六とん2 (講談社文庫) 作者: 蘇部健一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2008/08/12 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (12件) を見る 一応『六枚のとんかつ』は既読だが、続きを読んでなかったので今更ながら読んだ。で、今まで…