ジュブナイル文体でも森川の世界観は隠せない/森川智喜『踊る人形』

森川智喜の「三途川理シリーズ」の3作目。今作のもっとも大きな特徴は、ジュブナイルミステリーのような文体だろう。本気でジュブナイルを書きたいわけではないというのはストーリーのブラックさからも伺えるわけで、それにも関わらず、少年探偵団が登場するという理由できっちり文体を合わせてくるのは、森川の器用さの賜物だろう。また、ジュブナイルっぽいノリから森川の世界観に移行する意外性もある。

とはいえ、ミステリーとしてみると全体的には微妙。最後の最後の大オチはまあそこそこといった感じではあるが、細かいトリックのレベルがなぜかジュブナイルミステリーレベルまでに落ちてしまっており序盤~中盤があまりおもしろくない。意外とジュブナイルの文体というのもトリックのレベルと不可分だったりするのだろうか。