ファンタスティックかつスプラスティックな推理バトル/森川智喜『キャットフード』
怪作ってこういう小説のことをいうんだろうな。ファンタスティックかつスプラスティックな、『不思議の国のアリス』みたいな世界観の中で、二人の探偵が全力で暴れまわる。特に敵役である三途川理の書き方がかなりイカれててすばらしい。独特なルールを使った、他の推理小説ではありそうにないストーリー展開も魅力的。『注文の多い料理店』オマージュも、ミステリーそのものにはあまり絡まないけど、雰囲気を出すのにうまく貢献している。文章が下手という意見をネットでちらほら見かけるけど、あまり気にならないような。
ただ、オチの解説がさすがにちょっと足りなすぎる気はする。麻耶雄嵩の解説もネットもなければ結構ちんぷんかんぷんになってしまうかも。あとまあ、この表紙と題名で猫好きが釣られるということもありそうだけど、そういう人たちにとってはショッキングだろう。が、ぼくには関係ありませーん。
どうでもいいんだけど、もうひとりの主人公とでもいうべき猫のプルート、そこはかとなくエロチックじゃありません? とてもいいとおもいます。
実用性の高い経済政策指南書なので、山本太郎以外も読んでくれれば……/松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』
変分原理を省いた「あなたの人生の物語」に「未来」なんかないんだよ/ヴィルヌーヴ「メッセージ」
結構大胆な原作改変をしているんだけども、その多くは原作「あなたの人生の物語」とは大きく違うとはいえ、決して悪くはない……変分原理についての話を除いては。これを省いちゃったせいで、ちょっとまぬけな映画になってしまっていると思う。
以下ネタバレ多数につき注意。
続きを読む
たのしいたのしいお笑いエコノミクス/バウマン『この世で一番おもしろいミクロ経済学』
この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講
- 作者: ヨラム・バウマン,グレディ・クライン,山形浩生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 20人 クリック: 216回
- この商品を含むブログ (53件) を見る
自称「お笑いエコノミスト」のヨラム・バウマンによるミクロ経済学の解説書。独特な構成と絵の活用、そして一流の説明により、かなりとっつきやすい本になっている。
続きを読む文章表現としての「進化」とかグールドとか/吉川浩満『理不尽な進化』
すげー。
進化論をきっちりと理解した上で、そこから派生した進化論の歴史的・通俗的概念を書ききった本。ぼくが散々わめいていた進化論の通俗的理解について、わりと筋の通った(しかも意外と肯定的な)見通しを立てててびっくり。