「震える幽霊」はどこいったの?/白石晃士「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-02【震える幽霊】」

 

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊 [DVD]

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 なんだこれー。最初の30分はあまりおもしろくない。「震える幽霊」っていうのが「コワすぎ!」シリーズの他の作品で扱っている怪奇に比べてもピンとこないので退屈だと思う。ところが、相談者の一人である夕子(はるうらら)が出たあたりから、話は変な方向に進んでいく。「震える幽霊」はほったらかしで、夕子の電波女っぷりがどんどん暴かれていって、最終的に投げっぱなしエンド。この潔さはむしろ心地良いぐらい。

こういう、突然わけのわからない方向に話をすすめるのは白石晃士の他の作品でもよくあることで、「オカルト」で最初は心霊現象を追っていたはずが、底辺労働者のドキュメンタリーを経ていつの間にか江野くんと白石くんの友情物語になっていたりだとか、「カルト」で途中まではよくある白石晃士の作品だったのが、いきなり俺TUEEEEモノのラノベみたいになるだとか、「貞子vs伽椰子」で途中までは正統派ホラーだったのがいきなり幽霊大バトルになっちゃうのとかを思い出した。

とはいえ、「オカルト」「カルト」「貞子vs伽椰子」などの予想外っぷり(いや、「貞子vs伽椰子」はプロモーションが露骨だったので実際のところは予想外ではなかったのだけど)と比べてしまうと、ちょっと見劣りしてしまうというのはある。というのも、「オカルト」「カルト」「貞子vs伽椰子」などでは最初の方向性と転換後の方向性の違いが露骨(だからこそ面白い)のに対し、「震える幽霊」では最初の「幽霊を探す」という方向性と方向転換後の「電波女の謎」という方向性が、そんなに大きく離れているとは思えないからだ。だから、話のトーンは一緒なのに方向性が変わっているということで、ちぐはぐな印象を受けるということすらあるかもしれない。

 

でもまあ面白いしいいんじゃないんでしょうか。工藤(大迫茂生)の暴走っぷりやクズ要素もこのあたりから酷くなってくるし。

薄味/白石晃士「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-01【口裂け女捕獲作戦】」

 

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-01 口裂け女捕獲作戦 [DVD]

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 流石に1作目からめちゃくちゃぶっ飛んでるというわけではないものの、それでも口裂け女を捕獲するという後半のノリノリっぷりは、やはり白石晃士といったところ。工藤(大迫茂生)の乱暴さも「口裂け女捕獲作戦」では結構抑えられており、暴力が出てくるのが局所局所なので、逆にサイコっぽくも見えてこれはこれでアリ。

総じて、面白いか面白くないかでいえば面白いんだけど、基本的に地味だと思う。あと、後の作品に向けての伏線張りは、やや唐突で雑なように感じた。

時をかける名作RPG/「クロノ・トリガー」

 

アルティメット ヒッツ クロノ・トリガー

アルティメット ヒッツ クロノ・トリガー

 

 ゲームアーカイブスでやったけど、いやーおもしろい。

ストーリーの完成度が最初から最後までやたら高い。時間移動という設定を最大限に活かして、膨大な伏線を張っては回収し張っては回収しの連続で驚きっぱなし。クリアまで25時間くらいかかったので、ほどよい長さだと思う。

戦闘システムは、RPGとしては普通。しかしバランスが良好で、適度に歯ごたえのあるボス戦を楽しめる。また、お金と装備あるいは道具のバランスが今までプレイしたゲームの中でもトップクラスにちょうどよく、金策に悩むことがかなり少ない。これはストレスを溜めずにすむのでポイント高い。難点は、次に何をするのかがわかりづらいことと、やたらロードが長いことくらいかな(後者はPS版だけの欠点らしい)。

久しぶりにがっつりRPGやってしまいました。とてもおすすめできます(ぼくに勧められるまでもないと思うけど)。

 

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ミニマムすぎて映画だけだとわけわかんなくない?/ソダーバーグ「ソラリス」

 

ソラリス (字幕版)

ソラリス (字幕版)

 

こんなにミニマムな映画を作れるのか、というところはすごく感心した。動きがほとんどないのはもちろんのこと、登場人物もびっくりするほど少ない。これだけ登場人物が少なくても十分面白く成立するというのはすごいと思う。

 しかしこれ、めちゃくちゃわかりづらくない? 死んだ主人公の妻・レイア(ナターシャ・マケルホーン)がどうして再び蘇ったのとか全く説明ないから、原作を知らないとさっぱりだと思う。それから、過去の回想に入るとき、現在の時間と回想をシームレスにつなげるので、回想に入るのに対して身構えることができずに混乱しがち。

幻想的な不条理ホラーの皮を被った傑作ガール・ミーツ・ガール/矢部嵩『魔女の子供はやってこない』

 

 大傑作です。幻想的な不条理ホラーの皮を被りつつ、中身はめちゃめちゃよく練られた傑作ガール・ミーツ・ガール。

 

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中二病がこんなに不快だとは/早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館』

 

ドローン探偵と世界の終わりの館

ドローン探偵と世界の終わりの館

 

 ミステリー界の問題児・早坂吝による、ドローンを駆使した長編ミステリー。援交探偵シリーズほどの哲学はないものの、十分楽しめるレベルの佳作ではある。ただし、主人公が中二病でひたすら痛いので、下手すると今までの早坂吝の小説よりも読むのが苦痛かもしれない。

この記事はとくにネタバレありません。

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