楽しかった鑑賞体験は認知的不協和を発生させる/S・S・ラージャマウリ「バーフバリ 伝説誕生」

 わりとおもしろかった。やたらアクションシーンにスローモーションが多いとか、最初の滝を登るシーンがいくらなんでもバカすぎるだろとか、まあいろいろ不満はあるんだけど、歌と踊りとアクションのおかげで全然許せる。本格的なインド映画は3~4時間も延々と歌って踊ってる、みたいな噂を聞いたことがあるので、2時間ちょっとでインド映画をカジュアに楽しめるというのはいいこと。

でも、巷にいわれているほど絶賛するほどでもないかなあ。とくに、後半のパパバーフバリパートはあまりにもよくある話すぎて飽きちゃう。前半パートはアクションも無茶苦茶ながらも、それなりに面白みのある動き方をしているんですが、後半だとよくある動きばっかでそんなに面白くない。

あと、見ていてしんどかったのがヒロイン・アヴァンティカ(タマンナー)周りの描き方。勇敢な戦士であるアヴァンティカを無理やり戦闘服を脱がせて化粧をさせて、最終的に一人で城に乗り込んじゃうバーフバリのマチズモには、わりと顔をしかめてしまった。ただまあ、男尊女卑がすさまじいインドの映画だし、これぐらいのマチズモはあってもしょうがないかなあ……。

 

と思いながら「バーフバリ 男尊女卑」で検索してびっくり。「男尊女卑じゃなくてよかった」みたいな意見がわりと出てきてひっくり返ってしまった。もちろんぼくが相当偏った見方をしているというのはまああるかもしれないが、それでも「男尊女卑じゃない」というのは……。いやーさすがにそれは、楽しかった映画体験による認知的不協和でしょう。

ただ、こういう反応を見て、最初は賢しらに上から目線でバカにしてたんだけど、だんだん怖くなってきちゃったんだよね。というのも、ぼく自身の鑑賞体験だってそういう認知的不協和を発生させる可能性はいくらでもあるもの。だから、とりあえず「楽しかった鑑賞体験は認知的不協和を発生させる」ということは心に刻んでおかなければいけない。