ハッピーエンドばかりが幸せじゃない/水城せとな『失恋ショコラティエ(1~9)』

 

 久々に少女マンガ読んでどストライクだった!!! 大満足です。

登場人物が全体的に非常に気持ち悪くて、とてもぼく好み。個人的に好きなのは薫子で(ダメなタイプのオタクだ……)、めんどくささゆえの可愛さがいっぱいでとても満足。ついでに、少女漫画でバッドエンド(?)ってあんまり見ない気もするので(ぼくが視野が狭いだけな気もするけど)、かなり新鮮だった。「ショコラティエ」という職業が物語的にはあまり活きていないのはわりと致命的な欠陥だと思うけど、まあ許容範囲かなー。

 ところでこれ、最終巻のAmazonの評価がちょっと低いけど、もしかしてハッピーエンドじゃないからですかあ??? これで無理やり爽太と紗絵子くっつけたら、それこそひでー話になりません? ちょっと前にツイッターで「男は女の価値観に寄り添いたくないから少女漫画を読まない」みたいなツイートが燃え上がってたけど、もし少女漫画というものがこういうエンドを許容できない価値観なのであれば、ぼくはそんな価値観はくだらないと思うなあ(もちろん、少女漫画がそんな偏狭なものでないということなんてぼくはとっくに知っていて、こんなのは一部のハッピーエンドしか認められない人が怒っているだけにすぎないということはわかっているんだけれども)。

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図書館と電撃文庫

 

要約

図書館の本は基本的に透明なブックカバーが貼られていて、本自体のカバーは取り外せないようになっている。そのことを利用して、カバー裏やカバー下にコンテンツを載せることによって、図書館や電子書籍などで読むのではなく、紙の本を買って読むインセンティブが発生するかもしれない。

 

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肩透かし/野崎まど『ファンタジスタドール イヴ』

 

 野崎まどだからと期待してみたはいいものの、盛大に肩透かしを食らったと言わざるを得ない。いつもの野崎まどのようなぶっ飛びっぷりはないし(メディアミックスだからしょうがないのかもしれないけど)、野崎まどファンだからといって読む必要はないと思う。もちろん面白いか面白くないかでいえば面白いの部類に入れられる程度のクオリティは保ってるんだけど、わざわざこのためにアニメ見るのは……。

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百合マシマシ文学少なめ/「バーナード嬢曰く。」

 

バーナード嬢曰く。 [Blu-ray]

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 さすがにアニメ化ということで、原作に比べて文学成分は少なめ。とくに後半は、ド嬢の元々の魅力はほぼ失われてるといっていい。あと、町田さわ子(喜多村英梨)×神林しおり(小松未可子)の百合がいつのまにかマシマシになっており、キャラデザもやたら可愛らしくなっちゃったのが気になる。神林は原作の雰囲気をうまく残しつつ美化できてると思うけど、さわ子は誰こいつ状態。

その一方で、やたら描写が簡素な原作(婉曲的表現)をそのままアニメにするわけにもいかないので、細かい描写がかなり増えている(古本屋回で神林がバラード買ってるとか、喫茶店回で神林が『カラマーゾフの妹』読んでるとか)。そういう手段で、失われた文学成分が多少補われてるのは救い。あとそもそも、第1話で若島正柳下毅一郎をdisるアニメなんてこれ以外まず存在しないわけで、まあそういう意味でも貴重なアニメ……なのか?

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鋭い論考なのにデザインのせいで台無し/さやわか『僕たちのゲーム史』

 

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

 

 いい論考だと思った。ゲームの歴史を通史的に辿れているとはいえないのが残念な一方で、個別の論考はかなり鋭くて出来がいい。現代人の目からではなく、なるべく当時の人の目線で見る、という観点を、個人の記憶ではなく文献調査で補強しているのもえらい。

……っていうふうに褒めたいんだけどねー。デザインで台無し。ゴミクズのような書式のせいで異様に読みづらいし、さやわかが頑張ってそうならないようにしていたはずの、懐古趣味まみれのデザインにもなっている。これではせっかく頑張って書いたさやわかが可哀想なのでは?

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